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地域再生のための観光とはなにか7~◇まちづくりの結晶

これまでの6回で記述した観光は、いわゆる著名観光地はどうするかではなく、ごく普通の自治体の目指すべき観光のあり方を提言したつもりだ。

ゆえに観光関係の一部の業態だけが行うものではなく「まちづくりの結晶」を見聞してもらうことが本旨である。

しかし残念なことに地域が誇りを持って住み続ける場所ではなくなってきている。

あの頃は良かった!と回想する方々の「あの頃」とはいったいいつの時代で、何が「良かった」のか?その良かったことは地域に何を残したか?子どもや地域の担い手を減らし何を獲得したか?

戦後、経済的発展は遂げたものの大切な何かを失って漂泊する日本。

明治以降の教育で、染みついた全体主義はあらゆるところで負の要因となっている。

経済成長という化け物は、日本人の心まで喰らい尽くし、喰いつぶすと自らを喰う方向に向かう。

その間に弱者や地方は格差という奈落の井戸に落ちていく。

大都市では強い閉塞感があり、田舎に活路を見いだそうとしている若者も増加した。

地方における人口減少や高齢化を緩和する処方箋のひとつは、少子化対策を講じて出生数の減少に歯止めをかけることだが、残念なことに行政も住民も目先に走り、未来の夢を語る余裕が無くなっている。

行政のミッションやビジョンは綻びだらけだ。

例えば人口ビジョンで、少子化で子どもが欲しい、子育て世代に移住してもらいたいと酷い妄想シミュレーションを策定し、移住定住で大都市へPRに行くが、地元では学校や保育園の閉校や統合を進めている。子育て教育環境が悪化しているところに、子育て世代は移住したいと考えないにも係わらず縦割りの行政はそれぞれが勝手な意思決定システムで、持続可能な社会の政策選択を困難にしているのだ。しかもそのことが地区の将来に何をもたらすかと言うことが認識されていない。

今、私たちが取り戻さなくてはならないのは暮らしを楽しむこと、地域に誇りを持つこと、この国を多くの人々で一緒に支えていること、そうしたことへの実感だ。

つまり都市住民に羨ましがられる心豊かな暮らしを営んでいれば、ことさら移住・定住のPRなど必要ない。

旧態然とした観光を続ける限り、地域は消費され摩耗し不毛の地となるのは自明の理だ。今の国の観光政策を追っている限り、中央に収奪され続ける。

普通の田舎で行う観光は、企画段階から実施に至るまで、地縁・地域の連携と、NPOや地域づくり団体、さらに人と人の「つながり」を重視して、意識の共有を図ることが不可欠である。

地域の魅力を自ら発見できる旅を提供することで、良い人材を誘致できる旅こそ地方が行うべき観光だ。その素材は足下に転がっている。素材を磨くということは、自分や家族が暮らしやすくする。子どもを産み育てる環境を整える。

そして持続する「ふるさと」として地域の形を創る。観光はそのための地域創発のソーシャルビジネスとして昇華させることだろう。

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