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地域再生のための観光とはなにか6~◇風土ツーリズムの可能性

◇地方は観光で「稼げ」

長野県飯山市や飯田市を発祥とする日本型グリーン・ツーリズムは、既に20年以上を経ているが、全国各地では今も農林漁業の金太郎飴的な「体験主義」から脱却できないばかりか、その担い手も高齢化しており次世代に繋げられずにいる。

私も委員として平成19年度に調査検討をした『滞在型グリーン・ツーリズム振興調査』では、「体験主義は、あくなき企画合戦と価格競争に陥り、観光事業と同様の身体的疲労を伴って、短期的事業に終わる宿命にある」と注意喚起していたが、現在、地方では過疎高齢化がさらに進み、空き家や廃校、耕作放棄地が増加するなど、さらに難題が山積している。

一方、政府は「地方が観光で稼ぎ自立しろ」と促す。実態は首相が掲げるGDP600兆円の達成に向けて、訪日外国人観光客数の目標人数を倍増させ、2020年に4千万人、2030年に6千万人としたい観光施策の片棒を担がせたいのが本音だ。

その流れに乗っかった多くの自治体や民間もインバウンドの受け入れに凌ぎを削っている。たしかに観光客が一人でも増えれば、お金が地方に落ち、経済も多少は潤うかもしれない。

しかしリーケージ問題で書いたように、努力の割には観光客が落とすお金の大半が途中でUターンし、東京へお戻りになる。

このような状況で、観光は本当に地方を救える手段となるだろうか。

大型宿泊施設などインフラ整備ができる東京やオーバーツーリズムで悲鳴を上げる京都はともかく、観光消費の受け皿が不足する地域まで、遮眼革を付けられた競走馬のようにインバウンドをすれば、どこでも地方は救われると思ってまっしぐらに突き進んでいる。

地方はこのような依存型観光に甘受せず、自ら打って出る「地域主導型観光」へ舵を切らなければいけない。地域が本気でオリジナル・コンテンツや受入体制を構築すれば、訪日観光客にも響く価値創造も可能で有り現状を打破する糸口になるだろう。

◇風土(フード)ツーリズムの可能性

農山漁村の最大の武器は、海・山・里の自然があり、独自の食文化と深い歴史文化がある。

「観光」の創造には、自然・文化・教育・経済・生命・健康など、極めて多様な観点からの総合的な探求が欠かせず、これはまさに地方の暮らしの根本部分が観光となることを意味している。

現在、健康や食の安全・安心や地域の豊かな文化や景観、生活風土を守り、生活をしている場が新たな観光の価値として見直され、よりディープな日本を求める訪日客も現れている。

そこで大切なことは「食」だ。国内旅行者のみならず訪日外国人が期待する食の素材と文化を両方有している地域では、巨大なテーマパークや世界遺産が存在していなくても、十分に観光客に訴求する資源を持っているのだ。

ここに着目した山形県鶴岡市では「鶴岡食文化推進協議会」を設置し、「鶴岡ふうどガイド」や「鶴岡のれん」「庄内酒まつり」など食文化の体験ツアー、在来作物や山菜のレシピ集の発行ほか食の情報発信を行いつつ、市民の食育を通じた健康づくりや農林水産現場の理解促進、さらに郷土愛を育む活動を展開し、「ユネスコ創造都市ネットワーク」の食文化分野で、日本初の加盟が認定された。

概念としてのガストロノミー・ツーリズムやフードツーリズムは平成初期からあった、

昨今のインバウンドや地方創生事業で、脚光を浴びつつある。

元来、旅での食事はプライベートでもビジネスでも、旅行者のほとんどが楽しみにしている。「◯◯に行ったら◯◯を食べたい地酒を飲みたい」という願望を持っているものだ。地域ならではの美味しい料理や新鮮な素材が食せるなら必然的に旅の目的としても成立する。極端な話では蕎麦一杯を食べるために車で数百キロを移動するのに労を厭わない。

ガストロノミーは生産地の食文化や風土が重要な要素だ。例えば「うどん県」を標榜する香川県でもその地域のうどんは出汁から違う。観音寺市では瀬戸内海の「いりこ漁」が盛んなため、出汁のベースは「いりこ」だが、高松市に行くと「鰹+いりこ」がベースとなる。

全国の「ご当地うどん」も、小麦粉を使用する点では同じだが、各県で開発した小麦も相まって香りや麺の太さ、硬さ、形が違う。江戸時代から続く「一本うどん」(京都・東京・埼玉に老舗が残る)など池波正太郎の小説でも登場するが、不思議な感覚だ。お伊勢参りの旅人に食された「伊勢うどん」などは、御師の歓待で飲み疲れた胃腸に優しいうどんになっている。

つまり同じ素材でも「ところ変われば品変わる」のが、地域における食の醍醐味であり地域観光の核となっていくものだ。

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