出生率0という地方自治体が出てきました。
出生率が実質ゼロの社会になると、すぐに社会が止まるわけではないですが、労働力や消費力、自治体の税収減、医療や介護、地域防災の支え手減少など、社会を支える仕組みが崩れていくのです。この圧力からは誰も逃れられません。出生率ゼロ社会は、支える人がいなくなるのに、支えられる必要のある人の比率が高まることが、人口減少より問題なのです。
気づかないで人生を終える人は幸せかもしれません。
「面白きこともなき世を面白く」と死の間際で高杉晋作は言いました。地域を持続させたいと思うなら、お住まいの地域のことに関心を向けてください。
手遅れになる前に皆で何ができるか人任せにせず考えて行動しませんか。
■栃本ふるさとプロジェクト
栃本は現在、村人だけで総有を維持する段階から“村人+関係人口”で総有を維持する段階へ移行している最中と言えます。
2015年から始まった 栃本ふるさとプロジェクト が地域住民と連携しながら空き家再生や交流事業を進めています。
プロジェクトの理念は「あなたのふるさとをつくる」です。 ここでいう「ふるさと」は出生地ではありません。
栃本を訪れた人が、畑を耕す、山を歩く、地域住民と交流する、ワインを育てることで、自分自身のふるさととして関われる場所を創ろうという考えです。
私がイベントで訪れた時、何人ものお手伝いが都内からやってきていました。機能不全に陥った集落を移住者や外部人材が補い始めているのです。
通称「栃ふさ」プロジェクトの開始当初から、標高約750mの斜面の畑を開墾し、ピノ・ノワールやカベルネ、シャルドネなどを栽培するワイン・プロジェクトを中核事業としました。参加者が剪定から収穫までの作業を行うことで、山村との関係づくりの復活を目指しています。
また栃本で最初の民宿であった場所を民泊「甲武信」として再生、さらに古民家を改修した栃本旅籠「空」を開業しました。これは宿場町であった栃本の再現であり、単なる宿泊施設ではありません。
宿の再生はイコール交流の再生ということで、滞在してもらう仕組みとして、茶摘み(秩父栃本茶として加工販売)や蕎麦打ち、山菜・キノコ採取、 沢登りなどの体験メニューによる関係人口づくりを企画。手づくりで栃本キャンプ場「森と空」も完成、そこに滑り台を設置し終えた段階です。
ここで重要なのは「消費する観光」ではなく「参加する関係人口」を増やすという考え方を貫いている点でしょう。
さらに地域住民の憩いの場として、「ふるさとてらす」や「栃ふさかふぇ もくもく」など飲食・交流拠点の整備、湯屋「月」という公衆浴場を整備する徹底ぶりで、栃本集落と共に再生へ動き出したのです。
これらの取組は従来の「地縁共同体」だけではなく、関係人口を含めた新しい共同体への移行とも言えるでしょうし、地元紙共有林の木材を活用するなど、昔の入会地管理に近い側面があります。
こうしたことから、栃本は単なる衰退事例ではなく、日本の山村が今後向かうであろう「自治会の次の形」を先取りしている可能性があります。
どうしたら「観光」でもないのに訪問したくなる地域を創るか。「地域資源の再生」というより「共同体の再生」を目指す「栃ふさ」は、その入口に立っている段階です。
その成否はまだ見えていません。しかし自治会の存続そのものではなく「栃本の山や墓や祭りを、自分ごととして引き受ける人を地域内外からどう増やせるか」という課題を解決したときにおのずと見えてくると思っています。
「栃ふさ」の取組は、地縁共同体が衰退した後、関係人口共同体が本当に次の担い手になれるのかとの問いに対し、「自治体の後に来るもの」として全国でも珍しい社会実験を続けている場所なのかもしれません。

