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地域再生のための観光とはなにか8~◇常民観光

昨日秋祭りの話を書いたが、田の神は五穀豊穣をもたらすと「気が枯れ」て、精も根も尽き果てる。それはそうだろう。人間にお願いされて必死で一年間頑張るのだから。力を失った神様。つまり穢(けが)れた神様は、祭りが終わると山に上がり籠もって気を貯める。要するに「田の神」=「山の神」というわけだ。そして翌2月と再び山から下りてくる。この時の里では降りてくる神様を見ると祟りがあるからと、集落民全員がお堂に一晩籠もるところもある。

さて横道に逸れていたので本道にもどす。

◇常民観光を進めよう

旅は自分の日常生活とは違う場所に行き経験をすることであり、旅とは非日常空間に身を委ねることだが、私が進める観光は日常空間の観光化であり、それは豪華絢爛の「ハレ(晴)」の旅ではなく、「ケ(褻)」の旅を造成することだ。

近年の日本の観光は、観光立国推進基本法の制定(2006年)や観光庁の発足(2008年)というエポックから、アジア圏を中心とした訪日外国人の急増もあり国の観光政策は大きく前進したかに見える。

国を挙げての観光振興を受けて、多くの大学で観光学部や学科の設置され、観光学や観光政策に関わる書籍、論文はここ10年ほどで膨大な数のものが上梓されてきた。しかしその多くは集客戦術を趣旨とするビジネス本やノウハウ本、そして先行地域の事例集の類であり、地域の暮らしに立脚した地域づくりやまちづくりの視点が欠けている。

観光庁が推進する「DMO」も、どのような組織体制で観光客を迎え入れるかという点に重きを置き、県や行政を横断したプロモーションを任務とする組織が各地に誕生しており、基礎自治体も、地域活性化から移住、そして地域ブランディングと多くを期待している感がある。

ところが自治体が設置した観光交流や加工などの三セク拠点が赤字。 少子高齢化、過疎化が止められない。観光組織にはメニューをそろえPRはしているが、観光客は来ない。そして何よりも期待する定住も進まないという実態がある。

私の造語であるが「常民観光」は、その地で暮らす住民自らが語り、もてなしを行い正当な対価を受け取る「おもてなし人財」を創出するもので、結果として住民が、そこに暮らすことの幸せを感じ、自らの地域に誇りを持ちより良い地域を次世代に繋ぐことを主眼としている。

本項の最初から述べているように、地域の固有価値の源泉である文化資源の発見・再認識とそれに基づく地元学・地域学の構築、そしてそれを活かした観光文化の振興によって地域の社会福祉水準の向上、地域力の成長、地域の創造的環境の創出する新たな方向性を示し、地域づくりの同一線上にビジネスがあり、住民による観光の取組が持続する社会を構築するきっかけとしたいからなのだ。

■常民観光の定義

「常民」(じょうみん)という言葉を始めて用いたのは民俗学の祖、柳田國男で「里人」を意味する言葉で農耕の民を指していたといわれる。その後、民俗学においては民俗文化や伝承を伝える人の総称として定着したが、さらに広義の解釈として「一般庶民」を指す言葉となっている。

このように解釈が変遷している常民の概念ですが、「常民観光」は次のことを基本とする。

  • 受入者は普通の一般人であり旧来の業界関係者ではないこと
  • 既存観光地を排除しないが、観光のあり方が新しいこと
  • 農林漁業だけでなく地域の風土に根ざした資源を活用していること

以上を常民観光の基底として新しい旅を提案することである。

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柳田・折口の板碑 板葺きに置き石

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