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地域金融と行政・民間の連携による地域活性化3

■ローカル・マネー・フローで地域力の内部留保
俗に定住者一人当たりの年間消費額は124万円と言われ、暮らしと消費額は密接に関係している。拍車がかかる人口減少は地方に様々な悪影響を及ぼしている。特に中山間地域では人口減少により路線バスなどの公共交通機関が運行中止。生活に必要な食料品や日常品を販売する店舗やガソリンスタンドが閉店。高齢者の足が無くなり徒歩圏内の店舗も閉鎖で生活困難になっている。当然遊休農地や空き家は増加、山林の荒廃、有害鳥獣被害の増加といった複合的な影響が起こっている。また少子化で保育園や小学校が休園・廃校という負のラスパイレルが発生している。
そこへ大手スーパーやタッグを組んだ全国展開の店舗が郊外の安い地価のエリアに進出し、さらにその系列であるコンビニエンスストアーが農村部まで店舗展開して、地域の金を中央へ回収するという構図である。
ここに追い打ちをかけるように、地元JAの金融と保険、そして信用金庫が最後の有り金の獲得に邁進して地域からすっかり抜いていってしまう。これではどれほど地域が稼いでも地域内で金が廻らないから必然的に地域は疲弊する。
高い利息であれば、不可分所得が少しで上がり地元消費にも廻るだろうが、低金利政策は地方自治体や中小企業、個人に金融の放漫経営のツケを払わせているようなものである。

近頃よく目にする光景がある。朝早くから開店しているファミリーレストランに高齢者が集い、昼頃まで談話しながら居座る。あるいはコンビニでシニアから高齢者が自分で食べる分だけ少量の総菜や弁当などを買っている。地域の店舗や食堂が消えてもニーズが残っており、今後は拡大の一方であろう。つまり地方の商売が成り立たないのではなく、営む人たちが新しい流れに乗れなかっただけの話で、これらを指導すべき商工会(商工会議所)や地域金融は何ら手を差し伸べなかったのである。
地方を持続させるためには、地域で稼いだ金を地域で廻すことが重要である。簡単な事例で農産物直売所があるが、暮らしの中にまだまだ地域環流させるビジネスは山とある。
ここは地域金融がその能力を発揮して、自治体と一緒に地元のあらゆる産業や団体、個人が連携することだ。法律や条令を金科玉条として動かない理由や言い訳をしたり、僅かな顧客の取り合いをしている場合ではない。
■地域金融と自治体がツーリズムをメインに連携する
地域の豊かな自然や食、文化が認知されれば観光客が訪れ新たな消費活動が展開される。ここで大切なことは、各種ツーリズムのステークホルダーは地域住民との認識だ。それには暮らすことの価値を認識し、守る機運を醸成しなければならない。
ところが一番の担い手である地域の観光協会等は旧態依然の活動である。しかも数年で異動してしまう行政職員の事務局が多く、地域資源の商品化やマーケティング、プロモーション能力にやや難がある。
ツーリズムによる地域のブランド化は地域経済のみならず、住民の暮らしの向上に寄与する。地域の暮らしの中にある「ほんもの」や「生業」に特化して、住民一人一人が主役のプログラムや訪問者が住民や主催者になれるような商品化することで、地域は多彩な観光の組み立てが可能となり、観光客も多様な楽しみや滞在方法を選択できる魅力を見いだすはずである。ゆえにこれからは地域価値を結集した総力戦を仕掛ける必要があり、ここは地域金融の出番だ。
複数自治体を営業エリアとする信金は、中小企業や商店、個人まで小回りが利きさながら御用聞きバンクでローカル情報に触れる機会は多い。
膨大なビッグデータと経営ノウハウを持つ地域金融が、近隣行政と連携しつつ民間主導でネットワーク化を図り、横断的・総合的にプロデュースして、観光関連事業に対する内外の出資を募る、ネットワークを駆使し連携・交流・異業種マッチング・販路開拓などの金融が得意とする分野での力を発揮すれば、ツーリズムから新たな価値産業が創出し、雇用が生まれ多くの住民への利益配分ができる。しいては預金の獲得や貸し付けによる金庫の営業収益の向上となるだろう。
ますます混迷が予想される地域で「信金は我が街の誇り」と言える仕掛けづくりに期待したい。

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