地域活性化では観光振興一本槍、しかもインバウンド観光に過度に傾斜している感じがしてなりません。
国は観光を地域経済・日本経済の発展をリードする「戦略産業」と位置づけ、2026年度から2030年度までの5年間で訪日客数6000万人(旅行消費額15兆円)を掲げ、「インバウンドの戦略的誘客と住民生活の質の確保」、「国内交流・アウトバウンドの拡大」、「観光地・観光産業の強靱化」を施策の柱として、地方誘客やリピーターの増加など地域への観光分散や効率的な誘客を図るため、多様な取組に向けて目標設定しています。
観光は定住人口を交流人口で補完すると政府は言いますが、地域の担い手が決定的に不足しています。
今さら指摘するまでもなく、日本は深刻な人口減少社会となっています。残念なことに日本の人口は今後増加しません。
地方の人手不足はどのように生み出すのでしょうか?
■補助金依存の地方観光では未来が見えない
観光庁の2026年度「観光庁関係予算」1383億円の内訳では、主要事業の補助事業の比率が極めて高く、その補助要件にインバウンド観光に資することを旨とすることが、地方の観光振興において目先で狭い対応・対策となっている。
民間だけでは稼ぎが少なく不安定な観光に対し、国がその公的支援で力を入れることは良いことですが、地方自治体や企業、団体が頼りすぎる補助金漬けの依存体質にしてしまう懸念があります。
国が旗を振ることで倍々ゲームの予算措置がされるようになりましたが、一方で事業が乱立し、どの事業が地域にとって効果が発現するか自治体も迷走しています。また補助金獲得が上手い自治体と地域の実情を表現できず補助金が取れない自治体間の格差も生まれており今後の課題となるでしょう。
同調性が極めて高い日本人の性格は自治体にもあり、俯瞰する目でなく「隣は何をしている」目線の施策が多く、金太郎アメのような観光振興が全国津々浦々に拡がっています。これはコンサルティングする専門家の問題でもありますが、単なるアイデア勝負ではなく、交流や文化を通して持続的な価値を生み出せるか、ふるさとと感じる心地良さを観光客に、どのように見せ体験させるかがポイントとなるでしょう。
■お裾分けは高齢者が主役で
現在のサービス社会では、消費者が高い価格を出してもと思わせることが重要です。
それには「企まない企み」を忍ばせる計算高さと、来訪者にお裾分けするボランティア精神を融合させた企画を造成する技術も必要です。
田舎ツーリズムは、受入側と来訪者の壁をなくし、親密で濃密な関係を構築していくことがベストですが、地域の風土を強烈に印象づけることもキーになります。
観光の担い手がいないと嘆く地域は、周りを眺めてください。一番の地域資源である高齢者がゴロゴロいるじゃないです。
地元の高齢者たちは世界でも唯一無二の存在です。これこそ地域オリジナルであり最大の強みなのです。
資金力で派手なイベントや仕掛けができないエリアでも、高齢化した地域には知恵や歴史、技で卓越した高齢者がたくさんいます。つまり高齢化エリアならではの観光振興が十分できるわけです。「高齢化」をチャンスに変える試みや発想が地域社会を持続させる原動力になるのです。
■稼ぐのではなく地域を創る高齢者観光
多くの自治体が観光で外貨を稼ぐことに躍起になっていませんか?
高齢者を単なる福祉の消費者、要介護者とみていませんか?
今、シルバー人材センターの登録者が減少しています。その要因は民間就業先が増加したり再雇用制度が充足してきたこともありますが、仕事内容のミスマッチが大きいように思えます。センターからの依頼は、除草、清掃、管理、受付、家事援助などの軽易・短期業務が中心です。金銭や労働条件が働く上では重要ですが、高齢者は、生き甲斐を求めたり、地元に貢献したいとする方もいます。
ゲームチェンジのときが来ました。
田舎の観光を「お金を稼ぐ手段」ではなく「社会をつくる手段」に変えていきましょう。まずは「観光で何を変えるのか」という視点を持ちましょう。
観光客の増加を追い風にできるかどうかは、人材確保と省人化の両立にかかっていますが、田舎は都市以上に観光人材不足です。その中で「誰が支えるのか」という課題は避けて通れないテーマです。
その人財のギャップを高齢者の皆さんに埋めてもらうのです。高齢者が多い地域は最大の資源であり人材です。その有益な素材に合った観光の形を作るのが現実的です。
地域のお年寄りが有する智恵や経験は、観光でも大きな戦力となります。大量集客型イベントはできませんが、農山漁村観光を志向する来訪者に、少人数で満足度の高い観光を施すことができるでしょう。
高齢者が多い地域は、逆にシニア旅行者に優しい地域づくりと相性が良いです。もともと「移動しやすさ」「休みやすさ」「不安が少ない環境」が求められバリアフリー化が進んでいるでしょう。それはひいては、シニア旅行者や子連れ、障害のある方、外国人にも選ばれやすくなるはずです。
現在、公共の移動手段が少ないエリアであれば、路線や停留所、運行時間の見直しで、生活者と来訪者が使いやすい環境を、観光振興とリンクさせることや小型送迎車や予約制乗合交通を用意することで生活者にも利することになります。
高齢者が動くということは自身の健康にもなります。でも長距離・長時間は歩けない。ならばベンチを用意しましょう。トイレ環境も良くしましょうなど、高齢者を受入主体にすることは、暮らしている方々にも様々にメリットが出るわけで、高齢者が受入主体になることは「地域に貢献する観光になる」ということです。
■高齢者が生き生きしている地域は魅力に感じる
高齢者が観光を仕事として動いていると見えれば、ここは安心して過ごせる暮らせる地域なんだとの認識が拡がるでしょう。「なにか時間がゆっくり流れてる」なんて感じさせれば、その高齢者観光は成功です。
人に優しい地域としての価値を見せれば、必ず幅広い層に響きます。単にシティプロモーションと称して、どこぞのPR会社に委託するなど愚の骨頂です。そんな財源があるなら、地域の暮らしに資することに金を使いましょう。
もう行政の「やってるパフォーマンス」で税金を遣うのは止めましょう。情報発信で実態以上に膨らませない。特別な観光資源がなくても「普通の暮らし」は来訪者にとって非日常の魅力になるのです。高齢者の知恵や人生経験を体験価値に変え、若者たちがその足跡を辿れるようにしましょう。
しかし高齢者だけで企画・発信・予約対応まで担わせることは負担が大きく拒否されるでしょう。そこで必要なのが若い移住者や地域おこし協力隊員、地域に興味を持つ大学、それにデジタルに強い外部の人や連携できる民間事業者とのコラボが必要となるでしょう。
仕掛ける上の注意点は高齢者に過度な負担をかけないことやボランティア頼みで終わらせないこと。後継者や運営人材を育て、持続させる原動力とすることが重要となります。
高齢者に偏る観光振興では、若さや派手さで勝負できません。ポイントは高齢者の知恵を価値化することや少人数でも高付加価値型にする、安心・快適な受入環境を整えることが大切です。
淡路島でパソナが浮遊層向けに、生活習慣や体調の改善を目指す長期滞在型の施設「ザ パソナ・ネイチャーバース・リトリート」を開業するというニュースが飛び込んできました。30泊で1室410万円からの部屋には全室に天然温泉を備えているといいます。
再出発の旅は始まります。パソナのような豪華絢爛な施設はできませんが、真逆でも「ここに自分の居場所がある」と感じさせる観光振興を進めましょう。

