爆買いで日本に訪れていた中国人は、最近国内旅行にシフト。農村旅行や文化体験旅行が大流行しています。現状は中国人客が減っても他国のインバウンド客が穴を埋めていますし、相変わらずオーバーツーリズムは解消されていません。政治的理由から日本への旅が縮小したのが一番の要因ですが、ゴールデンルートは明らかに飽きられているのです。
では地方はその代りになるでしょうか?
政府はこのオーバーツーリズム解消のため、地域へ農山漁村への誘導を行っています。
しかし全国どこでも通用する「豊かな景観や食、文化」を謳うだけで、地域のオリジナルを伝えられていません。これでは訪日客が選択できない状況であり、全国津々浦々への恩恵にはほど遠い状況です。
地方創生がパッとした成果を上げられず、政府は観光振興に旗を持ち替えました。
元々、山村地域は「疎」ですが「世界文化遺産」級の塊です。とてつもない宝が日常や当たり前の中に埋もれています。ところが自地域の強みを軽視しているか、理解していないためメニュー化できていないのです。
ゆえに自分たちのアイデンティティは何か?歴史的風土をはじめとする資源は何かを再度学ぶことが大切になります。
■地域活性化の前に地域の目覚ましが必要
政府は「訪日客数6000万人・観光消費額15兆円」を2030年の大目標に掲げています。
消費額15兆円は為替変動で達成するかも知れませんが、逆に消滅する可能性だってあり得る不安定なものです。
新たな観光立国推進基本計画では、2030年の目標としてリピーター4000万人の獲得と地方部での宿泊1.3億人泊が追加されました。すでに2025年のリピーター比率は約65%に達しており目標が達成する模様ですが、訪日客の地方分散は中々進捗しないのが現状です。
インバウンドが持続可能な地域貢献に資するか、その最大の課題は地域に多様な人材が不足していることです。
従来から地方における重要テーマは宿泊で、その受け皿として「農泊」を推進していますが、課題は地域の受入体制と地域のキャパシティでしょう。
地域再生を成し遂げるには、「人」と「仕事」の新しい循環を創り出す必要があります。
全国で900万戸に達した「空き家」は、一見すると地域の重荷ですが、視点を変えれば国内外の観光客を受け入れるための最大のインフラとなります。ところが地元で一歩を踏み出す方々がいません。
悲しいことに大半の方々は「ねむり姫」のように、王子様を待っているだけ。誰かが助けに来てくれるまで動かずにいるメルヘンな世界の住人になっているのです。
受動的な地域に助けは現れません。大切なのは、住民自身が「ここには何もない」「不便で辺鄙なところだ」と卑下しないことです。
前回書いた栃本は外に開くことで変化しつつあります。そんなソトモノを受け入れる寛容さが住民に求められます。地元では当たり前すぎて気づかない価値を、外の視点を借りて再発見してみましょう。
「こんな田舎に良く来るね」という言葉を発するのではなく、地元に居住する方々が、人を呼び寄せる「花」になることです。移住者を迎え入れるための具体的な準備をしてみましょう。
■ここは僕たちの居場所
ポール・マッカートニーが最新アルバム『ダンジョン・レインの少年たち』の中で、『Home to Us』(僕たちにとってのホーム/故郷)で故郷リバプールのことを“大したものじゃないと言われても仕方のない場所だった。けれど、僕たちにとってはそこが「ホーム」だった。そこが僕たちの居場所だったから”と歌っています。
そうなんです。ポールにとってリバプールは、最高に愛すべき『故郷』だったのです。
皆さんが生まれ育った「ふるさと」が痛んでいます。
国民の命を支える食料を生み出す農村は、もはや住民だけでその機能を維持することには限界がきています。だからこそ、既存のコミュニティの壁を少しだけ低くし、外からの風を受け入れる「寛容さ」が不可欠なのです。

