政治的な思惑で制度が設計され、その結果、複雑な仕組みが国民に押し付けられている。
今回の例でいえば、卸業者を介さず備蓄米を販売した際のスピード感が、それをよく示している。
自由経済の原則を無視した結果でもあるが、喫緊の課題が山積する中、法制化され施行に至るまでのプロセスは、あまりに遅々として進まない。
制度をもっとシンプルにすればいい。しかし、政策の一つ一つの裏に、特定の利権への配慮があるのか、結局、本来最初に恩恵を受けるべき庶民が、最も後回しにされている。
その一方で、短期間で成果を求められる国のプロジェクトが増えている。
見た目重視の「短小軽薄」な成果を行政や企業が意図しているとは思いたくないが、助成対象となる国の事業は、半年程度の期間で達成不可能な内容が採択されるケースも珍しくない。
三年ほどで交代する人事体制の中、担当者は「自分の在任中の成果」を最優先にしているのだろうか。
長期的な成果や将来への視点は、誰か別の人が考えればいいと思ってはいないだろうが、コロコロ変わる政治家の思惑に振り回され、深夜まで残業する省庁の方々に同情の念すら感じてしまう。
翻って地方も、限られた時間と人材リソースが足りない。
通常業務に加え、国から突然降ってくる新たな事務事業に翻弄され、本当に必要な施策が末端の自治体では後回しにされているのが現状だ。
本来、自治体は地域で最大かつ最高のシンクタンクであるべきだ。
ゆえに地方公務員にはリスキリング(学び直し)が必要だ。
安定的で高品質な施策を継続して住民に提供するためには、職員が現場を離れて学ぶ機会を十分に確保することが欠かせない。
そのためにも、職員数に余裕を持たせるべきである。
住民との接点が最も多い末端の自治体こそ、十分な人員を確保しなければならないのだ。