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道の駅――生き残るのはどこか

インバウンド観光の急増、旅行費用の上昇、さらには生活必需品の価格高騰
――こうした複合的な要因により、2025年のゴールデンウィークは、国内の多くの人々が「近場で過ごす」選択をしている。
加えて、大手旅行代理店はその戦略を訪日外国人向けに大きく舵を切り、国内旅行者を置き去りにしている現状も見逃せない。
一方、都市部に暮らす人々にとって、食品価格の上昇はもはや日常の実感となっている。
高騰する米をはじめとして、生鮮食品全般が値上がり傾向にあり、生活防衛意識が強まる中、「安価に新鮮な農産物が手に入り、ついでに自然にも触れられる」場所として、道の駅への関心が高まっているのは当然の流れといえるだろう。
2025年1月末時点で、全国に1,230の道の駅が存在し、さらに農産物直売所は季節営業のものも含めて約23万3590店舗に達する。
今や「道の駅」は、年間売上で約1兆円規模とも言われる一大産業であり、地域活性化や雇用創出の起爆剤として、多くの自治体が新規開設を模索している状況だ。
確かに、成功を収めている道の駅も存在する。
保田小学校
だが現実には、道の駅も直売所も、すでに飽和状態にある。
これからは「淘汰の時代」に突入することは避けられない。
施設の建設自体は、議会で予算を通せば行政にとっては比較的容易な事業だ。
しかし、いくら立派な施設を建てたとしても、そこに“魂”が込められていなければ、やがては負の遺産と化すだけである。
その“魂”とは、施設を運営する主体と、その中心を担う人材、そして何よりも、魅力ある農林水産物を提供する生産者たちの存在である。
生鮮品の量と品揃えの豊かさこそが、道の駅の明暗を分ける最大の要素なのだ。

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加えて、訪れる人々の心を惹きつける「特色づくり」も不可欠である。
商品、食事、加工品などに磨きをかけなければ、消費者は立ち寄ることすらない。
成功している道の駅の多くは、美味なパンやソフトクリーム、ジェラートアイスなど、誰もが惹かれるアイテムを持っている。
パンが決め手の道の駅
さらに、地域ならではの食材を活かした料理の提供も重要な魅力だ。
より細部に目を向ければ、地産地消を活かした加工品の多様さ、駐車場から店内への動線設計、照明や陳列方法など、成功のカギは多岐にわたる。
これら一つひとつに高度な工夫と努力が求められ、並大抵のことでは実現できない。
道の駅世羅
開業を目指すならば、計画と準備段階で明確な集客目標・売上目標を立て、ロケーションや交通量を綿密に分析し、店舗および駐車場の適切な規模を設計すべきである。
さらに、集客の核となる店舗の誘致や、運営主体とその中核となる人材の確保も必要不可欠だ。
これらの準備を怠れば、開業後に「こんなはずではなかった」と後悔することは火を見るよりも明らかである。
設置者には、真に地域と共に歩む覚悟が求められている。
道の駅みなみやましろ
ひみ番屋街

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