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土着する・アラハバキ妄想編―製鉄技術を持つ神々

アラハバキは漢字で「荒吐神」と当てられる。だがアラハバキを漢字に当てると見えなくなるものがある。
日本では「タタラ製鉄」で生ずる鉄滓(てっさい)を「アラ」と呼ぶ。
ただし冗談ではないが「アラーの神」とは関係はない。じゃあ残りの「ハバキ」は何だ。ハバキはヒッタイト文明で鉄を「ハバルキ」と呼ぶそうだ。
はい、分かりましたね。アルハバキは製鉄の神なのだ。
2017年9月、紀元前2250~同2500年の地層から発見された遺物で世界最古級の人工の鉄の塊が発見された。アナトリア考古学研究所・大村幸弘所長が発掘調査の大成果であるとともに歴史を書き換えるできごとだった。場所はトルコ・アナトリア地方の古代遺跡である。
この時代に君臨していたのは「ヒッタイト帝国」である。ヒッタイトは以前から「鉄」を精製しそれを武器に軍事的優位を築いていたが、それは紀元前1200年代からが定説だった。
カマン・カレホユック遺跡から出土した「鉄滓(てっさい)」はその定説を1000年遡った。
世界最古の鉄くず
ヒッタイト帝国は製鉄技術を秘密裡に死守し独占することで、古代の中近東の覇者となり得たのである。
トルコのアナトリア文明博物館に津軽とそっくりな遮光器土偶や土器が出土しているし、アラジャホユックの遺跡の出土品と、うり二つの文様が大湯のストーンサークルにある。

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ヒッタイトには千の神々がいたという。日本の八百万神とよく似ている信仰だ。天候の神テリピヌが怒って隠れてしまい、全ての植物が枯れ果てた。困った他の神々は探し回り、草原で寝ていたテリピヌを見つけ説得したと言う神話は、天の岩戸伝説と一緒ではないか。
もう一つ、次の写真を見て欲しい。どうだろう?何と似ていることか。
縄文のビーナスとヒッタイト・ハッスナの置物
ヒッタイトと縄文が二重写しに見えると言うことは、簡単に考えれば同じ民族で同じ信仰を有していた証拠だろう。
海から来た種族に滅ぼされたとされるヒッタイト帝国。たぶんこの種族はギリシャではなかったろうか?ふるさとを追われたヒッタイトの民はシュメールで新たな文明を作ったが、氷河期の終わりで天山山脈の氷が溶け大洪水(ノアの箱船伝説)となり、さらに移動、そしてシルクロードのルートで中国、朝鮮半島を経て日本に到達した。
このルート上に製鉄技術と龍神伝説が残っているのである。因みに新羅は、昔の名前に「辰」が付いている。それこそ「龍」ではないか。
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民俗学者の祖と柳田國男が言う菅江真澄は、青森の「三内丸山遺跡」当たりで、鎧のような焼き物(縄文土器)を発見し絵に留めており、江戸時代から大量の遺物が出土していた。そして戦後も発掘は続き、とうとう平成に大集落跡を発掘。世間を驚かす発見となった。
この遺跡が発見される数年前に訪れた司馬遼太郎は「北のまほろば-街道をゆく」で、「三尺下に、他地方にない感覚の豊かさを秘めている」と書いてから数年後、途方もなく巨大な縄文前期から中期(約5900-4200年前)の三内丸山遺跡が発掘された。
三内丸山遺跡の柱構造物

三内丸山遺跡の柱構造物


たたら製鉄に従事する人の集落は「山内(さんない)」と言われた。この遺跡では発見に至っていない(まだ全てが発掘されていない)ので、今後の発掘でタタラ製鉄の跡が発見されれば「山内」の地名の意味がはっきりするだろう。
発音で伝わった言葉は結構、重要である。「たたら」はサンスクリット語で熱を意味する「タータラ」とか古くから優れた製鉄技術を持っていた「タタール族」に由来するとする説もある。
面白いことにタタラ製鉄の跡が出土しているエリアには、ダイダラボッチ伝説が残る。
勝川春英・ダイダラボッチ
ジブリ「もののけ姫」では、ジコ坊が「でいだらぼっちだあ!」と叫んだアレである。しかし伝説のダイダラボッチはちょっと違い、基本は山や湖沼を作った大巨人である。
柳田國男は全国の伝説を集めた「ダイダラ坊の足跡」(中央公論)では、ダイダラボッチは「大太郎」に法師を付加した「大太郎法師」で、一寸法師の反対の意味であるとした。名前も各地で若干違うが、皆さんの地域では何と言うだろうか。
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スサノオの「スサ」や最初の宮(須賀宮)の「スガ」は、鉄が採れる場所を意味する。古代朝鮮語でも「ス」や「サ」は砂鉄を表わすらしい。スサノオはそこから来ているとの説があるが、今までの鉄のルートからすれば、この説もありかなと思える。
因みに素戔嗚が八岐大蛇を退治した刀は「アメノハバキリ」だ。略せばアラハバキとなるではないか。

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