一覧地域再生

ポスト・コロナの地方観光づくり-訪問客は何を受け取り、何を支払う

平成10(1998)年と比較して国民の可処分所得が約6万5千円減った。
コロナ禍で旅はますます他の趣味や余暇活動と、この可処分所得の争奪戦を日々繰り広げることになる。
この厄災で可処分所得は現役世帯で相当減少しているだろうが、リタイアした方々にあまり影響はないだろう。しばらくは60歳以上の高齢者に的を絞ったツアー造成が良い。
地方の方々は、良いモノを作れば売れるとか、来てくれると相変わらず考えている。この消費者を見ない供給者側の一方的な観念を打ち消さないと地域は取り残されるだろう。
では、あそこに「行ってみたい」との素になるのは何だろうか。
自分の日常を考えてみよう。朝はテレビでニュースを見る。出勤中は新聞や広告を見る。
日中は同僚の口コミ情報。帰宅中や帰宅後はSNSや各種Webメディアと常に何らかの情報に接している。
この普段の行動の中で、新たな情報を得ている。ゆえにこの行動の中に、我が地域の情報が出ていない、目につきにくいとすれば地域は存在していないのと同じなのだ。
地域で良いネタだと思っても、消費者は大量な情報の中で生活しており、メディアへの接し方も選択できる時代だ。
まずは地域が認知されなければ始まらない。地域を知らなければ行きたいとの欲求は、起きるはずはないのは明白だ。これは簡単な理屈だ。
行きたいと思わなければ、どれほど素晴らしい地域であろうと売れないし、旅行事業の継続は不可能だ。メディアへの露出も重要だが、テレビは消耗度が激しいので1年も経てば忘れられる。最も重要なものは口コミだ。家族が友人から「あそこは良いよ」と聞くことが、意思決定で重要な要素となるのである。
「◯◯って、どこにあるの?」から「◯◯に行きたい!」に意識が変わらない限り、観光客は来ないしモノも買ってくれないのである。
インターネットのHPやSNSは誘客の重要な要素だが、全国の観光関係サイトは情報発信がPDFを貼り付けただけとか、重たい写真のアニメーション、地図データなどの位置情報が手に入らないほか見たい知りたい情報に到達しない。

DSC_0439

DSC_0439


観光客に不親切な稚拙で見づらいHPでは致命的で、とても客を誘導できる環境ではないのだ。
特に観光はウィズコロナの中で、地域をPRする切り込み役となる。
極端な話、スマートフォンの通信料や有料アプリがライバルだ。今後さらに日本の人口が減れば、旅人も少なくなるのは自明の理である。
そうした状況で、いつまでも客数を追いかけることは愚の骨頂ではないだろうか。
顧客ニーズに敏感なところは、高価格帯のメニューを出している。
顧客満足度の高い客は価格を気にしない傾向にあり、客が食指を動かすのは単価ではない。「逆に価格」を価値と考える客は、他の安価のものに目移りするので、まずリピーターにはならない客と認識しよう。
観光地はリピート化しないと発展しない。
価格でなくリピート化させるには、地域や人に共感してもらうことである。
観光客は何らかのテーマや目的を持って旅を計画する。
観光客と住民の双方に従来では味わえなかった出会う旅こそが、一人ひとりの関係性が深まる中で感動を創りだし、共感した観光客がリピーターやサポーターとして変革する。だから多くの地域住民の巻き込みや小規模観光地では近隣自治体とのネットワーク化が不可欠となる。
ゆえに基本的に次の点に留意することが地方観光で大切となる。
①ターゲット:年齢性別のほか、家族・生活・行動パターン、趣味、仕事などリサーチする
②サービス内容:価格競争にならないサービスで、おまけ、接客対応、潜在意識を刺激する
③既存の武器は何か、何を切り札にするのか:思い、達成感、願望、優越感、社会貢献、自分づくり
④何を差別化して商品造成するか:いかに売るかではなく、何を売るか。
⑤情報の製品化をする:形が見えないと手に取れない。見えないものを工夫で理解してもらう
⑥国内で戦える商品か、地域限定で勝負するか
⑦品質保証はだれがするか:自己満足型ではないか、責任の明確化、商品説明は分かりやすいか
⑧人の温もり・愛情など感性価値を提供する
訪問者の人生の一コマに感動を提供することが観光だ。そして共感を得ることが受入側の最大のメリットなのだ。

Pocket

QRコード