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コロナ禍後の未来を考える(3)

■バイ・ローカルで再生しよう
中国のことわざに『入りを量りて、出ずるを制する』とある。つまりリーケージ(漏れる)を減らし、域内自給率を向上させることが、地域再生の大事な点なのだ。
そのために自地域において総合的なアプローチから“人・物・金を地域内循環させるシステム”を構築していくことが重要だ。
そのためにまずは地域内での買い支えをするバイ・ローカル運動を進めよう。コロナ禍で地域に根ざした飲食店や商店が消えてしまうことは、自分の暮らしが不便になるだけでなく買い物弱者を増加させることになる。
明日の地域を支え合うため、今は買い物や食事、テイクアウトで支援の輪を拡げよう。そしてアフター・コロナに向かうため、地産地消や域内調達率を高めていこう。
まずは行政が先導して学校給食、公立病院、福祉施設などの公共施設から域内調達率を高める。その調達配送システムを確立する中で、域内の店舗、旅館、民宿の域内調達率を高め、域内流通を活発にする。これで地元の生産者から流通・小売り業者などを支えることができるはずだ。
さらに食品だけでなく広域の同一経済圏で工業製品の原材料の域内調達率を高めたり、周辺の業種との連携強化を図り、手を取り合い支えあう経済関係づくりを緊密にすることで、ノウハウや人材の域内環流ができれば仕事も増加するはずだ。またそうした地域に魅力を感じた企業や人材もやってくるに違いない。
藻谷浩介氏は、儲けた金が地元で廻るには地元本社の企業が増えること。地域内の決裁権限が増えることが最終的なゴール。農業は自分で決められる。この地元で決められることが大切で、飯田は地元で決められることを広げてきた。そして「地域に根差した本物が生き残る時代」になったと言う。
企業のパフォーマンス的SDGsでなく、ローカルこそ最もエコで持続的社会の基礎だ。
環境保全やエコロジーが叫ばれる現代で、地産地消が進めば、遠方まで物資を運ぶ必要もなく流通におけるCO2削減にもなり、地域内循環で資産の環流が進み、地域活性化に繋がるだろう。
■昔からの社会システムは通用しなくなる
政府が旗を振った「働き方改革」やダイバーシティの取組は、現場での浸透力が今ひとつで実際の進捗度に相当なギャップがある。
コロナ禍で慌ててテレワークやWeb会議、オンライン授業へシフトしているが、過去の常識で生活し仕事をしてきた国民は右往左往するのみで、業務は休業中が実態だ。
昭和に確立した年功序列で出世とか生涯一企業などはあり得なくなる。毎日同じように満員電車で通勤する形も変わるだろう。好まなくても新しい世界や働き方と向き合わざるを得なくなったのだ。
自分の常識(しがらみ)を打ち破る重要な転換点が訪れた。
「実績がない。どこもやっていない」という考えでは、社会変革についていけなくなるだろう。因習や前例踏襲を残したままで、新しいことを考え行動しようとしても、自ら「壁」を作っていては、なかなか良い考えが出ないし、良いアイデアも足を引っ張られ、イノベーションは起きないのだ。
小松左京の「復活の日」では南極大陸だけ感染を免れ人類は生き残った。極端な話、「ポツンと一軒家」が人類の唯一の救いとなるというあらぬ空想してしまう。
コロナ禍で「移動減少社会」が顕在化してきた。ゆえに地域の仕掛けで大切なのは補助金依存やイベントで人を集めることでなく、コトに共感し助けてくれる新たな互助の価値創造がこれから大切なる。
アフター・コロナには今までの常識は通用しない。
今までのような定式化したモデルはないが、ヒントや選択肢は目の前にあるのだ。
3.11東日本大震災以降、顕著となった「エシカル消費(応援消費)」はその一つであることは、現在の飲食店テイクアウトで実証された。
人は噂で動く。
美味しい店に人が押し寄せるように、「あのまちは人が親切だよ」とか「あそこの食事が旨かった」と耳に入れば、いずれ良い噂に敏感な旅人が訪問してくれる可能性も高まるだろう。
助けてくれない政府に税金を払うくらいなら、住民と直結する市町村に「ふるさと納税」に向かうのも一つの方向だ。
AIでは日々の営みの中で、地域を保全している住民の苦労は分からないし、本物の笑顔は作れない。コミュニティにシナジー効果を継続的に与えられる「利他ビジネス」を創発することが良いだろう。
地域の特性や環境をベースにした新たな仕組みを作り、自らの資源価値を創造すれば、内外の人々が共感し成長を助けてくれると信じている。

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