■地方自治体と信用金庫の現状
2013年7月18日、自動車の街デトロイト市が財政破綻したニュースは記憶に新しい。一昨年はペンシルベニア州、ロードアイランド州、アラバマ州、昨年もカリフォルニア州の市が財政破綻して連邦破産法9条の申請をした。
日本国内においても昨今の政治・経済の激変から、地方のあらゆる産業が疲弊し税収が落ち込み行政財源も底を打つなど、基礎自治体の財政破綻は海の向こうの話ではない。
都市と地方の様々な格差は拡大する一方で、アベノミクス効果は地方において何ら効果を発現せず、高度成長期以上に地域の若者は都市に流れ、地域の暮らしを支えてきた地場産業や集落コミュニティをはじめ、日本の「ふるさと」がメルトダウンの様相だ。
信用金庫はそうした地域の限定エリアで営業しており、地域経済が落ち込むことは信金にとっても命取りである。
信金は地域住民が会員となり出資した、協同組織の非営利法人の金融機関である。いわゆる株主第一主義の銀行と違い地域社会の利益を最優先するわけで、荒っぽく言えばNPOのような使命がある。
ところが現状はローカルマネーの集金マシンとして機能し、大雑把に言えば集金した約半分を信金中金に出資。信金中金での運用益を還元してもらい、それで自金庫の収益の大半を確保する経営が続いている。
特に地方の小規模信金は地元に優良貸付先が少ないことや、金融政策による自己資本比率ほか様々な規制も相まって、貸倒引当金を積立てなければならない地元企業への融資よりも、信金中金はコストやリスクが少ない預金運用先となるため、預貸率が軒並み50%以下と低くなっている。このようにメガバンクのチェーン店化したことで、地域内でどれほど外貨を稼いでも、その金は地域外に漏れ出し地域振興に寄与することがないのである。
■飯田信用金庫の挑戦
飯田市は地元の飯田信用金庫と平成20年8月に協定を締結し、飯田信用金庫が全額出資する「NPO法人しんきん南信州地域研究所」を設立した。
シンク(思考)+ドゥ(行動)+ヒューマン(人材)のダムとしての機能を有する同所は、信金の営業エリアである南信州地域全体を俯瞰しつつ、公立ではない自由な立場から地域の本質を見定めながら地域経済や市民の暮らしにプラスとなる新しい価値や志を高め、地域のコストパフォーマンスを高めていくことを目的としている。
地域づくりを経済行為とは関係がないとするむきもあるが、地域づくりは経済活動と密接にリンクするものである。経済行為だけでは大都市や大企業、大産地に永久に勝てないが、経済活動と地域づくりが両輪となり地域が動き出せば、他に負けない豊かで住みやすく、住みたくなる地域に生まれ変わる。
少子高齢化や地域間格差を払拭するには、従来の延長線ではなく未来への目標を常に共有し、段階的・総合的にプロデュースしなければならない。多様な人材と多彩な情報をツールボックスとしてパッケージしつつ、行政や企業、市民に対し様々な提言やノウハウを提供できる金融のプロが地域経営に参画することの意義は大きい。