宮本の父、善十郎が常一に授けた十訓の前半は、現地における地域資源発掘の根幹といえる。宮本はこの手法を生涯守り続けた。
一、汽車に乗ったら窓から外をよく見よ。田や畑に何が植えられているか、育ちが良いか悪いか、村の家が大きいか小さいか、瓦屋根か草葺きか、そういうところをよく見よ。
駅に着いたら人の乗り降りに注意せよ、そしてどういう服装をしているか気をつけよ、また駅の荷置場にどういう荷が置かれているかをよく見よ。そういうことでその土地が富んでいるか貧しいか、よく働くところかそうでないかところかがよくわかる。
二、村でも町でも新しく訪ねていったところは必ず高いところへ登って見よ、そして方向を知り、目立つものを見よ。
??? 峠の上で村を見下ろすようなことがあったら、お宮の森やお寺や目につくものをまず見、家のあり方や田畑のあり方を見、周囲の山々を見ておけ。そして山の上で目をひいたものがあったら、そこへは必ず行って見ることだ。高いところでよく見ておいたら道に迷うようなことはほとんどない。
三、金があったら、その土地の名物や料理は食べておくのがよい。その土地の暮らしの高さがわかるものだ。
四、時間のゆとりがあったらできるだけ歩いてみることだ。いろいろのことを教えられる。
ツーリズムに限らず、地域を見る上で参考となる言葉である。