農林水産省が昨年5月に発表した「みどりの食糧システム戦略」で、我が国の食料・農林水産業が直面する持続可能性の課題として“生産者の減少・高齢化が一層進行し、生産活動への支障が顕在化している。また集落の消滅など地域コミュニティの衰退が懸念される”と真っ先に掲げている。
過去の農業・農村政策の失敗を省みず、生産活動への支障があるとか懸念されると他人事の書き方ではないか。
農業のイノベーションと叫ぶのは良い。サプライチェーンの改革向上やスマート農業も大事だろう。自然環境を守るために科学農薬の低減はもっともである。さすがに有機農業の取組面積を2050年国内の耕地面積の25%(100万ha)とする計画は、この戦略が発表された途端に批判の嵐が吹き荒れた。
日本の風土では難しい有機農業をやれる農家がどれだけいるか?
通常でも安価な取引がされる農産物。有機農産物だからと言って単価が倍になるわけではない。そこはサプライチェーンの改革で、食える農業にするのだろうか?
もちろん農家も意識改革や農業のやり方、生産から販売まで様々な改革は必要だが、さらに農家にはGAPだHACCPの導入だと負担を強いている。
だがしかし、これでは食糧自給率の下落は止められない。
農産物の輸出で儲けようなどと言っている状況ではない。自国民が明日にでも飢えるかもしれない緊急事態が目の前にある。
政府は農業関係の補助金を出せば良いわけではない。食糧確保は国防であることを国民が共有してもらうための政策が必要である。
日本の食料は大規模農業ができ省力化できるところだけで賄っているわけではない。
どうやらこの戦略を検討したメンバーは、中山間地や山村を知らないのだろう。
条件不利地の農業は大規模農業を展開しずらく専業が少ない。だが小さな山村集落での営農継続により自給率低下を少なからず抑えている。
そうした集落のコミュニティが青息吐息であることも事実だが、本当に現場を見て懸念されると書いたのだろうか?
誰が農山村を潰してきたのか?
高度経済成長からずっと体質が変わらない国が最大の癌であるが、前述したとおり他人事なのだ。
もちろん他にも様々な要因はある。そこで暮らしてきた方々も、申し訳ないが積極的ではないだろうが潰すことに加担してきた。地元JAは協同の精神を高らかに謳いながら、真っ先に暮らしの店やガソリンスタンドを閉じた。もはやJAは農家の味方ではなく肥大した組織防衛のために活動している。
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こうしたことから私は中山間地や山間地域の戦略理念として、『農村八策』を考えてみた。それは、
1. 地域は自ら考え創るもので与えられるものではない。地域に無関心でいることは、自ら地域の消滅に力を貸すものである。
2. 未来計画を持て!独りよがりでない計画を共有しよう。
3. 良いことの神髄は真似ろ。ただし二番煎じでなく創意工夫をして地域資源を活かせ。
4. 前例踏襲でも正しいと思うなら朝令暮改、即時撤退は良し。決断が大切で優柔不断は地域を弱体化させる。
5. お互いに智恵・金・力を出し合って持続する地域を創ろう。
6. 家族の健康と幸福が地域の健康であると信じよ。幸せな地域には人が寄り、人が住む。
7. 国内外の経済や政治状況に翻弄されない地域を創ろう。まずは様々な依存体質の脱却から手を付けよう。
8. ここに暮らすことに自信を持て。かけがえのない「ふるさと」に誇りを持て。