「Go toトラベル」は本日段階で、予定通り実施となる模様だが、世論に右往左往した大衆迎合政治の典型的なモデルとして教材になるものだ。
私は朝令暮改が悪いと言わないし、むしろその位スピード感を持って、最善手を打つべきだと思っている。
だが、、、「やりたい、やって欲しい」の要望を聞きつつ、地方から上がる「早すぎる、中止せよ」の声を聞き入れた結果、東京だけ外しての実施という折衷案であった。
Go to トラベル事業は「感染が収束した」ことを条件する閣議決定がされていた。
つまり「アフターコロナの景気対策」の目玉だったが、どうしても実施で7月22日が外せなかったのだ。ゴールデンウィークのマイナスを23日からの連休で回復させよとの天の声(2Fかな)があっただろう。
ところが、東京を始め各地で感染者の増加傾向の上に、梅雨前線による大規模な災害が発生するなど、国内は旅行どころではない状況に陥った。
最適解は他にもいろいろ考えられただろうが、急転直下の官邸判断で、お気の毒だが担当者は考える時間がなく見切り発車となったのはいがめない。
本政策で政府は、東京都民だけだけなく、客のメインとなる高齢者と若者の団体旅行は対象外と説明したことで、「都民は旅行に出るな。団体旅行は禁止」の誤解さえ生みかねない悪手を打ってしまった。
マスコミもセンセーショナルに感染者数の増加を報道し、Go toトラベルキャンペーンどころじゃないと、国民に「東京はヤバい」「東京怖い」を植え付けた。
これでは医療体制が脆弱な地方は「来ては困ります」となるのは明白だ。
明日の飯にも事欠く人がいる。災害で命を落とし家が壊滅した被災地がある。
キャンペーン実施はそうした方々の気持ちを逆撫でするばかりで、国民には響かないだろう。
ことコロナウイルスの対策は、総理肝いりのアベノマスクに始まり、初手から国民と乖離する愚策の連発であったが、止めが新たな混乱を生んでしまった「Go toトラベル」であり愚策中の愚策となった。
交通機関や宿泊・観光施設等の旅行関係業界の業界団体等で構成する「旅行連絡会」が「新しい旅のエチケット」を策定した。その例に、
・楽しくも、車内のおしゃべり控えめに。
・おみやげは、あれこれ触らず目で選ぼう。とある。
う~ん・・・これで楽しい旅になるのだろうか?
旅人と受け入れ地双方で疑心暗鬼がある限り楽しい旅はできない。
何度も言うが旅は「移動」と「交流」がメインだ。
この状況でGo toトラベルが地域観光の支援に結びつくだろうか?
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国交省幹部が「多少の感染者が出ることは想定内」と発言したとの報道もあった。コロナ禍で多くの観光関係者は、大きな借金をしてしまった。上から目線との批判もあるが、放置すれば倒産や雇用が確実に消えることを懸念した声である。
国内観光事業の市場規模は国交省の試算では約50兆円以上。月ごとに換算すると5兆円規模の産業が2月から「ゼロ」になってしまった。年間約550兆円と言われる日本の経済規模を考えれば、国交省幹部の言い分も分かる。
直接的に業態の疲弊(観光客ゼロ)ばかりに目が行き、がぜん注目度が上がった観光業だが、見えやすい地方経済の混迷の一つに過ぎない。
しかしこの状況が続けば他産業も壊滅的な打撃となり、さらにコロナ対策で貯金を使い果たした自治体がバタバタと倒れることになるだろう。
だから休業や外出自粛で疲弊している地方経済の活性化に自治体のトップは期待を寄せた。
しかし今回のGo toで利益を得るのは地方で無く、「新しい旅のエチケット」を策定した「旅行連絡会」の構成業態がメインなのだ。
にもかかわらず地方は、インバウンド客の代わりにGo toに頼っているだけで、地方観光や地方自治体自らの体質は何ら変わっていない。
目先の訪日客頼みにシフトして身近な国内客を蔑ろにしてきた大半の地方観光や地方自治体の責任は大きい。旅の醍醐味や魅力を国内客に丁寧に発信してこなかったツケが、コロナ禍で表面化しただけだ。
行き詰まれば外部環境に原因を求める間違いを犯していることに気づかないと観光どころか地方が消滅するだろう。
本事業が動く前に各地ではオリジナルの取り組みが行われている。
地方自治体だけでなく、観光業者自ら連携して動いている。それらは良く考えられた取り組みだ。
例えば伊豆市修善寺「対山荘」の石田学氏が企画した「愛LOBE伊豆旅」プロジェクトは、助成金など貰わずに宿泊施設や飲食店、お土産店、ガソリンスタンドほか地域の様々な関係者と手を繋ぎ「おもてなし」をしている。
地方は国の考え方に追随したり、落ちてくる交付金を当てにするのではなく、自ら考え、自ら行動することで住民を救うことが重要だ。
Go toトラベルに過度に期待せず、地域を作り直すつもりで、いかに観光を基軸に「まちそだて」をしていくことだろう。
良い成果を出したいのであれば「信頼」と「安心」しかないことを再度肝に銘じよう。
修善寺温泉、対山荘の夕食