5.RMOは新たな「結い」組織
地域の活性化には地域個性を活かした内発的産業を興すことが重要なファクターであるが、さらに地域の暮らしや環境保全、食育、そして人材の確保に至るあらゆる面において、波及効果を促し、地域自立を図りながら持続させ、次世代に繋ぐ仕組みづくりが求められる。
活性化を構想する場合においては、企画段階から実施に至る過程に市民協働のプロセスを導入し、地域経営の透明性と総合戦略の基盤づくりを図る必要があるとともに、地縁集団を中心に、地域間・行政間・異業種連携はもとより、NPOや地域づくり団体、さらに、人と人の「つながり」により生み出される力を結集することが不可欠である。
これにより地域の固有資源やコミュニティに光を与え、これらが生み出す住民のライフスタイルから、地域住民の発意によるソーシャルビジネスを育む長期的な指針と、風土に根ざした計画を育てるのである。
2つの事例は、そうした意味で多様な主体を吸引し、繋ぐ「新たな結い」機能を有する組織として、ハードとソフト、そしてキャピタルをマネジメントするRMOと言え、生活支援だけでは補えない地域の産業振興、人材育成、住民主体のまちづくりに昇華している。
以前に総務省へ提案していたRMOが名称だけ取られて、2013年度に総務省がモデル実証に入っている。詳細は不明だがNPOによる生活支援が主目的にも見られる。これは「新しい公共」の仕組みから脱却できていない。
筆者が提起しているRMOとは、地域で不足する人材・知識・デザイン・マネジメント、資金調達、連携・交流・異業種マッチング・販路開拓などのネットワーク構築等のリソースを補填するため市町村を含む多様な主体が参加し、横断的・総合的に調整しプロデュースする組織であり、前項で紹介した事例に近い。
こうした支援機能は、今後農山漁村が抱える様々な課題に対しての解決策となる。特に中山間エリアの単一自治体では、専門的な知識や技術、販売、情報発信などのノウハウを有する人材、地域資源を総合的にプロデュースできる人材が足りない。さらに人材育成においても外部人材の招聘に限りがある。
大事な点は住民が率先して学び、自ら実践する風土を創り出せること。補助金や助成金だけを当てにしていないこと。故人や集落では面倒な書面作成や資金調達ができること。ハード整備も計画時から施工、アフターケアの運営指導が得られることだろう。
例えばチラシやパンフレット、インターネットのホームページなどのデザイン作成を考えればわかるように、実際にコミュニティ・ビジネスをやっている人にはできないこと、あるいは、やれるけれどもうまくできないことを代行・補完する機能やオピニオン誌を発行し、行政や企業に呼びかけて資金を集め、それを関係する活動団体に分配するような、資金仲介の取り組みが中間支援組織によって活発になれば、農林漁業コミュニティ・ビジネスを展開する本体は自らの活動・事業の展開に必要な、間接的な労働時間を減らし、直接的な労働時間を増やすことが可能となる。
下図は筆者が想定した農村再生を目標とするRMOである。当然ながらこの他に地域の実情で組織形態は柔軟に変化するが、NPOでなく収益を確保して自立する一般社団法人として組織を考えることが望ましい。
【 参考:井上が想定するRMOの一形態 】