一覧たび談

韓国の農業農村ツーリズム事情(4)

■五味子は続くよ、どこまでも
 さて今回訪問した聞慶市五味子村は白頭山脈の中心にある山村で、五味子(オミジャ)を特産農産物とする村です。野生の五味子を里栽培樹木として改良し国が特産品として振興した結果、韓国に五味子ブームがおこり現在7億ウォンを売上げがあります。
この五味子の正式名称は朝鮮五味子と言い「シキミ目マツブサ科」の落葉つる植物です。6月から7月に白色(黄白色)の花が咲き10月頃に真っ赤な実をつけます。改良したとはいえ野生種に近く手作業で収穫しています。日本にも北海道や東北に五味子が自生しているようですが、栽培種は韓国内でも産地がありません。
 五味子は甘み・苦み・酸味・辛み・塩味という5つの味を持ち、
・主に気と肺機能を助け、咳の症状を止め腎臓機能を助け精力、目の疲れにもいい(東医薬学)
・疲労回復、目の疲れ、腎臓を温め陰部を丈夫にし、特に男性の精力を増進させる。糖尿を治し、煩熱をなくす効果もあり、二日酔いの解毒作用、鎮咳効果もある(本草書)
とされ古くから生薬として珍重されていました。
白頭山脈の麓に観光農村として整備した「五味子体験村」があり、初回に書いたようなお出迎えがあったのです。
食事の最初から並べられていたショッキングピンクの五味子ジュース。とにかく砂糖を山ほどぶち込んだ「甘?い!」ジュース。これが聞慶市滞在中の飲み物になりました。
それで結果はどうか?どう考えても糖分控えめの代物ではないので肝臓に負担をかけるし他の効用は定かでない。神頼みの方は通販で買って試してみるのも良いでしょう。
体験村には宿泊用に木造家族用部屋(15坪)、木造団体用部屋(10坪3部屋)、民泊黄土棟(60坪6部屋+サウナ室、家族用バンガロー、団体用バンガローなどいくつかのタイプがありました。
私が宿泊したのは民泊黄土棟(日本の農漁家民宿とは異なります)で血液循環を促進させ新陳代謝を活発にさせる効果があると言われる(あくまでも韓国での考えです)黄土(ファント)の体験を兼ねた宿泊棟でした。
次の朝、五味子体験村のビビンバとキムチという朝食を終え、午前中は「キムチづくり体験」
 こちらでの体験はキムチづくりのほか黄土宿泊体験、ヤクトルマスの素手づかみ体験、サツマイモ・ジャガイモ掘り、山菜採り体験、五味子の収穫や手染め・エキス作り・化粧品づくり・石けんづくりなどの活用体験、五味子餅つき体験、豆腐づくり、わくわく農楽などの体験があり、観光客の要望で様々な体験ができるようになっています。
 さてキムチづくりは寒い野外で震えながら、でも本場の体験。ちょうど行ったシーズンは全土でキムチが作られる時期で、キムチづくりのために休業に企業もあるくらい大事な行事となっています。最終日に一般の大型スーパーを視察したところ、白菜売り場は大変な人混みでした。
 今回の体験は時間も限られていたので、一度塩漬けしたものを戻した白菜を使用しましたが、スーパーでも一次加工を施した白菜が多く陳列され、誰でもキムチ漬けの素を用意してすり込むだけというお手軽な状態だったのは世相を反映しているように見えました。

■朴先生の農家レストラン
 昼食は聞慶邑各書里の朴先生の農家レストランの研修です。
農家レストラン「聞慶嶺くる道」は料理研究家と料理人の夫妻が素材や健康にこだわり、その素材を求めて聞慶市の山村に移住し開店した施設です。
 韓国の食文化は壊滅状態で伝統料理が失われつつあり、危機感を持った政府は韓国本来の郷土料理や伝統料理を復活させようとしています。そのプロジェクト第1号に朴夫妻を選定し、これからの韓国の食文化を再構築を試みているのです。
たしかに行く先々の料理はお馴染みのものばかりでしたが、朴先生のレストランは基本の伝統料理と薬膳が合体したような料理が並び、しかも辛いのは数品目だけ。なるほど本来の韓国料理とはこのようなものかと納得させられました。
 「料理とは食べる作るが揃わないといけない。心を食べてもらう」が基本姿勢の夫妻が作る薬膳は自家栽培や近隣の農産物、山菜を中心に身体に優しい。先生のレシピには科学調味料は存在しないとのことで、使用する調味料は50年の年月、甕で熟成された味噌と醤油のみの徹底ぶり。
 韓国の農家では旧正月に味噌・醤油を生で仕込みます。レストランで使用するものは50年前に仕込んだ50本、これを順次浸かっているそうです。
しかし韓国の農家はすごい。大小の甕が置いてある場所は男性立ち入り禁止だそうで神聖な場所ですが、毎年仕込む醤油・味噌やキムチが露天で腐らずにいることの脅威です。あの独特な甕は呼吸しているそうで、絶対に腐らないそうです。
 バイキング形式で様々な薬膳料理をいただきましたが、普段は少人数の予約を受けているとのこと。レストランの横には黄土でオンドルを施した宿泊所があり、1泊2万円程度との話。ここで一人一人の体調を聞いて個別の料理を提供してくれるそうです。
いや、恐るべし農家レストランの体験でした。

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