一覧たび談

韓国の農業農村ツーリズム事情(2)

■韓国の農山村「五味子(オミジャ)村」へ行く
 金浦空港を15時過ぎに出発。一路、高速道路で聞慶(ムンギョン)市の五味子村へ向かう。途中のサービスエリアで農産物直売所があり立ち寄る。
 韓国の高速道では事故多発が社会問題化している。たしかに貸し切り観光バスもスピードを出し、あまり安全運転とは言えないが、他の車両も相当なスピードで車線変更をする。
 17時頃に聞慶市に入る。高速道路を下りて薄暗くなった一般国道を走る。ここで問題発生。通常ルートが工事のため通行止めで、大型バスの車幅程度の狭い迂回コースを行くと、さらに狭隘となり反対から来る車との避けあいができない。反対方向からの普通車はまったく譲る気がなく突っ込んでくるのだ。何と結局、路肩を外せば絶対に横転する道をガイドなしのワンマンバスが数百メーターをバック。乗っている方はヒヤヒアものだ。
 再度、迂回する直前まで戻り、五味子村の宿泊施設(のちほど書くが農村リゾートのような施設)に連絡し、真っ暗な中、片側は谷底の狭い別ルートを走る。途中工事箇所があり、車の底を擦るやらバックから鬱憤が溜まっていた運転手は大声で怒鳴る怒鳴る。通訳に寄れば「俺は二度とここへは来ない」と言っていたとか。

 とっぷりと日が暮れた6時半にようやく施設入り口に着くと、何やら騒々しい銅鑼と太鼓の音が上から聞こえてきた。
 坂道を上がる。どんどんその音が大きくなり、上に着くと暗闇から太鼓や銅鑼を持ち民族衣装を着た女性たちの出迎え。強烈な音だがきちんとした節がある。この地方に伝わる「農楽」(のうがく)という民俗音楽だった。
 暗い中の移動で、どういう場所なのかさっぱり分からないが、もしよその人を事前知識無く飯田の山村に夜、連れて行ったら同じ感覚になるだろうなと想像する。
時間も押していたため旅支度も解かずに食事会場へ移動し夕食。日本人が一般的に想像する韓国の定番焼き肉が並んでいる。一般観光客にはそれで良いだろうけど、我々は農村ツーリズムの視察研修。どこにここの農村をイメージできようか。これが韓国ツーリズムの食の実態であれば深刻だと思いつつ、とは言っても肉やキムチは胃の中に収まっていくのだった(笑)
 食事が一段落済むと、今度は室内で「農楽」の演奏が始まる。さすがに鼓膜に響くが、以前に調査に入った方から「これがそのうち酔った感覚になり皆で踊り廻る」と言われる。
 この「農楽」は挑戦に古くから伝わる農村の伝統芸能で、踊りを伴う豊作祈願の祭りで行われるようで、現在でも各地に残りイベントに欠かせないもののようだ。
使用する楽器は「チン」と呼ばれる大きな銅鑼、「ケンガリ」(真鍮で作られた小さな銅鑼)、「チャング」(日本の鼓の大きなもの)、「ブク」(牛馬の皮を張った太鼓)、「ソゴ」(小太鼓)を叩く。聞くところによると他に木管楽器を使用するらしいが、1970年頃に4楽器のリズムだけでの演奏術ができたそうだ。
 「農楽」の発祥には諸説があるが代表的なものは戦争で戦士を鼓舞するため先頭に立って演奏する説と、仏教を説くため布教活動の際に打ち鳴らしたとする説がある。個人的は演奏を聴いて想像したのは「トルコ行進曲」と日本の戦国時代に指揮統率に使われた和太鼓だ。まさしくこの大音響で敵をビビらせるにはもってこいではないか。しかし楽器に触らせてもらい思ったのは、「おやこれは日本の葬式で使うぞ」だった。「チン・ボン・ジャラ?ン」そのものではないか。そのことを演奏した農村女性に聞くと葬式では絶対に使用しないとの回答だった。とすれば戦争説が有利なのだろうか。
 さて夜は更けていきますが農楽演奏は佳境に入り、参加者は楽器を持たされ打ち方を教わり、室内をグルグルと回ります。さらなる大音響に鼓膜どころか脳みそまで痺れだした。なるほどこれが音に酔う感覚(オーケストラに酔うとは全く違うけど)なのか・・・。韓国の農村滞在1日目が過ぎていく。(つづく)

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