■DMOの実態と課題
行政の補助金で運営する従来の観光協会は時代遅れのコストセンターだ。
そうした流れで生まれたのが、観光庁が推進する「DMO(観光地域づくり法人)」だ。
現在、観光庁が認定しているDMOは、広域連携DMOが10法人、都道府県DMOが38法人、地域DMOが286法人となっている。そこに現在、候補のDMOを合わせると353法人となっている。
だが制度化して10年経過した今、「名前だけDMO」とか、本当のマーケティング機能を有するのはごく一部で、実態としては観光協会業務(パンフ作成・イベント運営)の延長線に留まる場合が多く、この法人で本当に成果を上げているところは数少ない。
本来DMOが目指す組織は、プロフィットセンターとして、自前で稼ぎつつ地域貢献をすることで、特に地域課題を住民と共に乗り越えるツールとして、さらに地域発意のローカル・ビジネスの創業・起業が育つ環境づくりを進めることが求められる。
最大の課題は財源と人材不足で、行政依存から脱却できていないことだ。
また観光の根幹を担う観光施設や宿泊、飲食、交通、商店街などの多様なプレイヤーとの地域内連携が希薄であることも見逃せない。

■農村RMOの実態と課題
集落規模の縮小や担い手不足(就農者の不足、農業従事者の高齢化)という地域の構造的課題がますます深刻となっている。
この課題解決のため農林水産省は、農村RMO(農村型地域運営組織)を設置する施策を打ち出した。
この組織は小学校区程度をエリアに、農用地保全や地域資源の活用、生活支援という3つの柱をもって地域コミュニティを維持・強化しようとするものだ。
RMOは「地域農業+地域運営+生活支援」という複合的な枠組みを構築し、農業振興や地域づくりのみ枠を超えた活動を想定している点で、「住民福祉の担い手」と「地域の経営を図る」両面宿儺の顔を持つことが特徴的である。
ただしこれも観光DMOと同様に課題は財源と人材不足だ。
農業を核とする活動であっても、農業そのものが収益性・担い手確保という面で厳しい状況にあり、活動を支える財源を含む基盤が脆弱なのだ。
また最初の合意形成では、多様な主体の参加が求められる性格上、住民の意識共有や合意形成、運営体制の構築が簡単ではない。
実際の運営面では組織としての収益の確保と持続できる活動と運営が必要であり、どの事業分野で、どのように稼ぐか」が大きな課題であろう。
農林水産省でも現場での制度運用や継続的な支援体制の整備が十分ではないという声は聞いているようだ。

■人は人でしか磨けない
DMOも農村RMOも何かを一緒につくるために動く多様な主体が手を取り合うDH(デスティネーション・ハブ)であることが重要である。
しかし決定的に組織の要となる「地域プロデューサー」不足している。
観光DMOで機能している組織は、外部から人材を誘致したことや行政のサポートが行き届いていたゆえの成功事例だ。
農林水産省も様々な人材育成を重要であるとしてメニューを提示しているが、いずれにしても組織ありきでなく人材誘致や地元人材の育成を図り「稼げる組織」を目指さないといけない。
中間支援組織のプロデューサーは要石である。
人口減や高齢化など喫緊の問題の中で、短期スパンの稼ぎだけでなく、地区に何が必要か、何を優先順位とするのかを整理し、具体的な事業として実践していくことだ。
それは他力本願ではなく自身も努力することが大切だが、周囲の仲間や地区内外の方々に支えられて初めて良い仕事ができる。
組織の成果の全権がその両肩に乗っているばかりで無く、住民個々の思いや夢のパズルを組み合わせ大きな画を描くことができるかが組織の成果に繋がる。
地域や住民に愛情を持ち温かに接することで、行動することで自分や地域を助ける内外の多様な人材還流ができるはずだ。
ようするに「愛あるプロデューサー」であることが勝者となるはずだ。
核となるリーダーやプロデューサーは域内調達率を高めることが望ましい。
地元人材の育成こそ組織や地域の将来にも及ぶ重要案件となるからだ。
だがどうしても人材が見つからなければ、初動段階では外部人材の力を借りることはやむを得ないだろう。
組織の要のプロデューサーは自ら旗を揚げ突っ走るのではなく、地域で共に夢見る住民に旗を持たせ、実践では横から寄り添い、裏から押し上げることが大切である。
とにかくリーダーやスタッフの人材確保でプロジェクトの成果は決まる。
組織とインフラは作った瞬間から崩壊に向かう。
だが歴史文化と自然と人は、育てれば成長に向かうのである。

