ふるさと納税の問題を前日書いたが、それより危ういのは企業版ふるさと納税だ。
企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)は、企業が自治体の地方創生事業に寄附を行った場合、最大で寄附額の約9割が法人関係税から控除される仕組みだ。
2016年度の制度開始以降、全国で活用件数・金額ともに増加しており、2023年度には年間寄附額が600億円を超えた。
しかしその一方で、寄附が一部の自治体や特定分野に偏在し、地域課題の本質的な解決につながらないケースも多く、制度の持続性と信頼性が問われつつある。
いくつかの問題が噴出しているので羅列してみる。
〇地方創生の趣旨に反して、プロモーションが上手な自治体や都市近郊自治体に寄附が集中している。
〇人口減少や財政難が深刻な小規模自治体には資金が届きにくい一方で、企業側が節税対策の道具となっている。
〇寄附の使途が「地域振興イベント」や「観光施設整備」など短期的・単発的な事業に偏る傾向がある。
〇企業とのマッチングを行う業者が自治体の実情を無視した提案がある。さらに多額の仲介料や成功報酬を求めてくる傾向がある。
〇マッチング業者との契約が曖昧で、寄附金の使途や成果が明確に報告されていない事例もある。
〇一部では、寄附と引き換えに特定企業に有利な契約や便宜が図られるなど、癒着リスクが指摘されている。
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ある意味、企業の節税マネーロンダリングみたいなもので、関係団体で還流させるところさえある。
だが財政的に困窮する自治体ほど、企業版ふるさと納税を「補助金代替」として活用する傾向があり、自治体財政の自立性を損ね、長期的には地域経営力の低下を招く恐れがある。
また外部企業が寄附しても、地元企業や住民の参加や理解が薄く、地域内循環が生まれにくい。
つまり「地域自立」ではなく「寄附依存体質」が強まる懸念がある。
そして何より、職員の人材や経験不足から自治体は提案を丸呑みするだけで、コンサル依存型になり、自治体の内発的な力が育たないことだ。
これらの問題を解決するには、職員を中心に住民と協働で、まず「この地域をどう変えたいか」「10年後にどうなっていたいか」を明確化することだ。
さらに地元企業や住民が参画しやすいスキーム(ここが大事)を構築する。
そして寄付してくれる企業とは「共創パートナー」となってもらうことが大切となる。
これらを円滑に進めるためには自治体職員の企画立案や企業交渉、さらに事業検証と評価分析などの能力を高める学びを繰り返し、スキルアップを図ることや担当者の異動によるノウハウ断絶を防ぐ組織体制を整備することが重要である。

