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ふるさと納税の功罪 ― 自立か、依存か

ふるさと納税が始まって十数年。
この制度がなければ、上下水道や道路などの維持が難しいという自治体まで出てきた。地方にとって、もはや“命綱”といっても過言ではない。
2008年の制度開始時、全国の寄付総額は約72億円。
ところが2021年には約7,682億円と、わずか十数年で100倍以上に膨れあがった。地方の財政を支える仕組みとして確かに機能しているが、その裏側にはいくつもの課題も潜む。
地場産業が乏しい小規模自治体は税収を増やす手立てが限られ「稼ぐ力」が弱いのが実情だ。
国からの地方交付税や補助金だけでは立ち行かない。
交付税に頼るほど、収入が増えれば減額されるという「がんじがらめの構造」に縛られ、職員も新しい挑戦をしにくくなっている。
そんな中、「自由に使える財源」としてふるさと納税が注目されたのは自然な流れだった。
だが、制度が定着するにつれ、返礼品競争が激化。
いまや一部では「隠れた補助金制度」と揶揄されるほどだ。
昨今は寄付額を増やすために豪華さを競うようになり、仲介サイトへの手数料などで多額の公費が外に流出しており、総務省も沈静化を図る制度改正に乗り出している。
だがこの制度は、国と地方の関係の歪みをも映し出した。
地方が自立的に地域づくりを進められるようにするには、ただ制度を制限するのではなく、ふるさと納税のあり方そのものを見直す必要がある。
国は地方財政の健全化を“管理”ではなく“共創”の視点で支えるべきだ。
ふるさと納税は、地方を救う光にもなりうる。
だがその光がまぶしすぎれば、地方の自立という本来の目的を見失いかねない。ru2

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