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体験なきところに理解はない(郷土地理教育論から)

三澤は郷土地理教育論で「非常時を前に日本精神の勃興(愛国心)は大切だが、まずは自分が日々暮らしている場で郷土人(地域の人) の手を借りて、地域の自然や人間の営みを探求する体験を施さなければいけない。ただ体験させるのではなく、教師がその地域の風土性を意識しつつ体験させることだ」と論じている。

昨今は国を挙げて「愛国心の発揚」とか「体験活動の重視」などと旗を振るが、重要なのは郷土教育を地域住民と連携した開かれた教育で、ふるさとへの愛着心や誇りを持たせることにより、次世代が地域で暮らし持続していくベースを創ることである。

教師の体験が少ないことは誠に遺憾と当時嘆いていたそうであるが、教師の体験不足の現状は平成に入って深刻となっており、子どもの体験不足を論じる前に、教師や大人の体験不足を解消することが先決である。特に農村における体験活動や食育の現場で、教師の常識を逸脱した言動や行動が顕れることが多いし、経験不足による安全面に配慮できない危機管理不足が現場での重大事故となって顕れている。

例えば、野外活動では机でできない体験や気づきを発現させなければならないが、遠足でよそ見をせず並んで歩こうという指導しかできない。学校内での家畜飼育では、動物の生態も分からずペット程度の扱いか虐待に近いことを指導(指導していない場合が多い)し、ペットと家畜の区別が付かない教師は、生産現場で「かわいそう残酷!」の一言で、農家の気持ちを削いでしまう。家畜の役目を理解せず、「この食べ物は農家の方が一生懸命に作ってくれたものだから残さず食べましょう」と学校の給食指導は不遜である。

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