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地域再生の切り札12―現代の「世間師」になる

「世間」という言葉は、元々、古代インドを発祥とする「ダルマの宗教」の用語で、「世間法」から来ているが、日本においては、「この世」や「世の中」を指していることが多い。
類似の言葉に「社会」があるが、「世間」は自分など人間が生活しているところを指し、「社会」は、人間が暮らしている場所とか一定規模の団体の営みを指す。
一般的に「世間は冷たい」とか「世間を騒がした」、「社会生活」とか「現代社会」と区別して使用される。
なお英語表記では世間を「The world」、社会は「society」と表記するようだ。
もう一つ多くの人に共有されている公的な意見として「世論」がある。いわゆる「民意」と呼ばれるもので、国民の感情的な意見であり政治的な影響力を持つため、政治家の皆様がとても気にするものだ。
最近は「〇〇界隈」と言う「界隈」は世間と読み替えても良いし、SNSなどのネット社会にも「民意」のような「世間」が蠢動している。
■宮本常一が記録した「世間」「世間師」
昨年6月のEテレで放映された「忘れられた日本人」を見た方は民俗学者宮本常一という人物について多少なりと理解したと思う。
その宮本はしばしば「世間」と言う言葉を用いており「世間」とは何なのかを追求している。
「世間は一枚岩ではなく、いくつもの世間がおりかさなっている」とし、一人の人間が様々な層や階層などの複数の世間ごとに属性を使い分けている」と論じている。
何となく多重人格のようだが、現実の社会では会社や学校、地域など関係する場所で能面を付け替え、争いを避け無難に生活をしているというわけだ。
家庭やコミュニティの「境域」では、人々の行動を「しがらみ」とか「風習」など法律では無い「世間体」と称する無形の規範の中で暮らしている。
宮本は地域の人々の価値観がどのように形成されていくか、その概念が地域内に染み入る様子を調査したのだ。
そして1つの結論を導き出した。
「明治から昭和の前半に至るまで、どの村にも世間師がいて、村をあたらしくしていくためのささやかな方向づけをしたことは見のがせない。いずれも自ら進んでそういう役を買って出る。政府や学校が指導したものではなかった」と記述している。
「世間師」の発見である。
ムラには、どこにも「世間師」と呼ばれる人がいたのだ。
「世間師」は政府や役所とは無関係であるが、地域のルールや地域独自の文化を理解しつつ、自ら進んで新たな未来に向け、ムラを導いていた。
世間師は「概念」を分かりやすい比喩などの言葉に変えて住民に伝え、「地域にとって本当の目的や目標は何か」を問いなおし、地域をリードしてきた。
 激変する現在、こうした世間師が地域に存在したらきっと活性化するに違いない。
 そして現実にそうした人物が存在する。いわゆる地域リーダーだ。
 地域リーダーは流行りの「グローバル人材」でなく、自地域を俯瞰しながら、地域の根っことなる歴史文化を価値財として見られる「グローカル人財」だ。
企業と同様に地域も財源よりも人材不足のほうが経営危機をもたらす。
地域再生の最適解は一長一短ではできない。
いつまでも他人事や悪いことは他者のせいにしないで、自ら行動しよう。
人間も連れションとかアクビとか廻りに影響を受ける。サルでさえ仲間の行動につられる。
世間体を気にして動かないではなく、自らが現代の世間師として、一生懸命動いていれば、影響を与えるはずだ。
地元の人々を巻き込む、外部からの支援を受けながら地域再生のための活動を行おう。

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