一覧地域再生

江戸時代もマイクロ・ツーリズムのブームがあった

年末までにコロナ第5波が収束し、Go Toの再開を期待されたが、見事に蹴散らされてしまった。
第6波は感染力が強いオミクロン株のピークアウトはまだ来ないか。
ウィズコロナに向けて動き出していた観光関係にとっても、受難の日々が始まってしまった。
観光は地域経済の要である。再々度であるが遠方の客を狙うのではなく、管内や県内のお客様を誘致するマイクロ・ツーリズムを進めていくしかない。
***
平安末期の「熊野詣」は貴族の間で流行し鎌倉時代に武家に広まったが、まだ一般庶民には物見遊山の旅などあり得なかった。
庶民の旅が盛んになったのは、江戸時代の「お伊勢参り」が火付け役となった。仕掛け人は御師という総合プロモーター(現在のDMO)である。
お伊勢参りのゴールデンルートは行きは江戸~東海道~伊勢、帰りは伊勢~中仙道~善光寺~江戸である。そこにオプションで西国巡りや京都を入れる上級庶民もいた。
浮世絵のおかげ犬
十返舎一九の「東海道膝栗毛」もブームに拍車を掛けた江戸期最大のベストセラーである。
江戸~京都で片道約15日の旅。費用は平均一両千文(82,500円)であったそうだ。因みに当時の大工の年収が26両(130万円)、農家(田1町と畑5反)の年収が47両(235万円)の頃である。
膝栗毛を読んだ江戸庶民は一生に一度は旅に出たいと憧れた。伊勢講などに参加して憧れ旅をする人も多かったが、たった一回だけだ。
そこで近場を巡るマイクロ・ツーリズム(日帰り、一泊二日)がブームとなった。
特徴はお伊勢参りではなかった団体旅行である。
近場の参詣地となったのは「大山詣」「成田山詣」「江ノ島詣」「高尾山詣」である。
大山詣り(保土ケ谷)
東海道五十三次・藤沢宿と江ノ島
これら江戸近隣の旅が気軽にできたのは、一つに伊勢講と同様の「講」が組織(リピーターとかファンの集まり)されたことと、手形を必要としなかったことだ。
寺社にとっても大きな収益源となったため、講の団体参詣を歓迎し、至れり尽くせりの「おもてなし」をした。その講をサポートしパック旅行を担ったのも御師である。
近場で気軽に「ご利益」が得られる上に、男衆にはもう一つ「精進落とし」という秘密の楽しみがあったことは言うまでもない。
***
自地域やその周辺地域をターゲットとするマイクロ・ツーリズム。しかし課題もある。
地域経済の落ち込みと連動し、消費者の不可分所得(余裕ある金)が減ると、不安を助長し余暇にはできるだけ使わないと言う選択がされるからだ。
前回、マイクロ・ツーリズムで進めたときよりも、さらに地域を見直し、見過ごしてきた資源を発掘し、地元の方々が「あっと驚くようなコンテンツ」を創り上げていただきたい。
その新たなコンテンツは、SDGsを色濃く出してみよう。
ポイントは女性の活躍とアドベンチャーツーリズムである。
日帰り旅行がメインになる。近場であり交通宿泊以外のメリットを旅行者に見せないといけない。
この体験は自分を向上させるとか、学びがあるなど経験値を積み上げるようなコンテンツが良い。
たった今から仕込みを考えて欲しい。スタートが一歩でも早ければ、ゴールに早く到達する。
ウィズコロナの旅では「ずらし旅」で密を避ける工夫も必要だろう。
何でも流行だからと言っても、大都市から離れ二次交通が脆弱なところでのワーケーションは無理だと考えて欲しい。いくら自然豊かでも、どうしても交通が良い地域に行く。日常の買い物や食事も揃っていないと駄目なのである。
文化体験も大切な要素だ。地元住民は意外と経験していないので、地元の文化資源を知ってもらうチャンスとなる。
もうしばらくは辛いだろう。だが辛いと言っていても客はこない。
もがいて、藻掻いて、もがいてみよう。

Pocket

QRコード