一覧地域再生

ポスト・コロナの地方観光づくり-SDGsと観光-

SDGsにおける観光の取組は、以前から言われているサスティナブル・ツーリズムが元だが、環境の世紀にもっともふさわしい理論である。
SDGsは地域の魅力を未来に引き継いでいくための、大切な羅針盤となるので、観光においてもターゲットを明示した上で、コミットメントを宣言することが重要だ。
現在、各地で公表されている観光振興計画(ビジョン)は、そのほとんどが国の指導を受けたかのような金太郎飴の計画で独自性が感じられない。
計画が「隣町と同じ」とか、無難で誰も責任を取らない計画では、地域観光の差別化はできない。新しい生活様式が定着していく中で、相変わらずの量オンリーの観光振興計画も話にならない。
もう量から質に変わっているのだ。
根底にSDGsの考え方を埋め込み、持続する地域振興を目指すことが求められる。
地域観光における宣言は「私たちは◯◯を目指します」と公表すると良いだろう。
例えば農林漁業分野の観光では、自分たちの生活を思い出すと良い。森を育て、良い水を作り、食料を生産し、エネルギーを供給しているのは「あなた」であり、その営み自身がSDGsなのである。
二宮尊徳は「遠くをはかる者は富み、近くをはかる者は貧す。それ遠くをはかる者は百年のために杉苗を植う」と教えた。地方にもこういう地域哲学を埋め込まないといけない。
ことさら観光で、環境問題を断片的に取り上げるつもりはないが、環境保全やエコロジーが叫ばれる現代ではローカルは最もエコだ。
観光における地産地消が進めば、遠方まで物資を運ぶ必要もなく流通におけるCO2削減にもなり、地域内循環で資産の環流が進む。そして地域活性化に繋がるのだ。
雇用創出や貧困削減する観光や、誰もが当事者になれ地域経済が廻り持続する観光、環境や資源保全・保護をベースとする観光、伝統文化を守り多様性を認め合う観光など地域で仕込めるネタがたくさんあるだろう。
松尾芭蕉が「五月雨を集めて早し最上川」と詠んだが、地域におけるSDGsを一つの河の流れのように観光が集めていくのは素敵なことではないだろうか。
いつまでも狭い中で個々の取り組みに終始していると、やりたいことは達成できない。
人口減少で消費は落ち込む。消費の冷え込みは国内観光にも影響が出るのは明白だ。
「蛻変」と言う言葉がある。
「蛻変」とは蝉が卵から地中に這い出し羽化する過程で、その都度、脱皮を繰り返しながら全く違う姿に変化していくことを指す。
ポスト・コロナでは、地域も昔からの地域経営から脱皮する時期がきている。
次代に地域を繋ぐための地域づくりに近道はないが、しがらみや旧弊の殻を脱ぎ捨てて、今そこにある危機に向かわないといけない。
前国連事務総長の潘基文氏は「持続可能な開発目標は、地球上の美しい景色や先祖から引き継いできた文化・遺産を、次世代に引き継いでいくための人類共通の目標でありアクションプラン。この目標に対して理解を深め、できることから貢献していくことが地球上でビジネスを行うすべての人々に求められる時代が到来しています」と語っている。
ゆえに持続可能な社会に向けて観光が果たす役割や貢献は大きいと考えて欲しい。SDGs

Pocket

QRコード