帝国データバンクは5月20日現在で新型コロナウィルスの影響による倒産件数が全国で170社以上に上ると発表した。
非常事態宣言の解除があっても、3月からの経済的ダメージは簡単に戻らない。さらに倒産が続くだろうし、不安定な賃金・雇用で消費の伸びは期待できない。
ポスト・コロナ社会では、あらゆるところで価値観の変化が顕れるだろう。
「新しい生活様式」が示され、暮らし方は変容する。ゆえに古臭い訴求力の衰えた観光のままでは取り残される。観光客誘致も単なる「名物アピール」や「風光明媚」を垂れ流してもダメだ。ましてや既に集客中の観光資源に胡座をかいていると足下を救われるだろう。
コロナ禍のStay Home生活でテレワークでの在宅勤務も進んだが、課題も多く見つかった。昨年はIT関係企業がARやVR技術を活用した観光客誘致の提案がひとしきりだった。AIは旅人のニーズに最善の答えを用意してくれるかもしれないので、これら最新技術を使うのも良いだろう。決済方式も◯◯Payやクレジットなどキャッシュレスといった非接触型に移行しつつある。
もちろん田舎でもSNSの情報発信などデジタルマーケットの活用は考えなくてはいけない。
この厄災で地元回帰、産業回帰、そして様々なイノベーションが起きている。
だがまだ、本物の小鳥のさえずり、澄んだ空気、美味しい水と食、郷愁を感じさせる景観は訪問してこそ味わえることを忘れてはいけない。
ただし三密でない状態は田舎であっても作りにくい。
コロナ禍が始まる前から、宿泊場所や見たい場所、体験したいことを自分で情報を集める個人手配の旅が増加していた。今後はさらにこうした傾向が顕著となるだろう。
かつて旅に行けない者は、旅の読み物や風光明媚な所や名所旧跡の浮世絵を見て憧れを募らせた。今ではSNSの写真や動画あるいはAR(拡張現実)の体験で、行ったつもりの人もいる。
「東海道中膝栗毛」を書いた十返舎一九は、旅で見聞きし体験したことを多くの人と共有し共感を得たかったかもしれない。
例えばの話、自分の足で登った山は低くても達成感は大きく感動も増して、そのときの有様を人に話したくなるものだ。私自身も「異文化コミュニケーション」という学びの旅は、その経験を誰かに話したくなる。
オンラインの飲み会も一時のことで、やはり目の前で語り合いたくなるはずだ。話題がテレビやSNSで見たよでは薄っぺらい。やはり自分の経験を話すほうが盛り上がる。
受け入れ側は「自粛解除だ~!」と、瞬間の雰囲気(お祭り騒ぎや安売り)を作り出して押し通すことは賢明ではない。
まだ移動が制限される中、観光ニーズはどこにあるかを探り「新たなものさし」の基底に置いて戦略を立案し実行することが大切だ。
コロナではなく次の未知のウイルスが出てきても不思議ではない。そろそろ集中豪雨や台風、このところ各地で起きている地震も気になるところだ。
そうした事象に対して地域観光の柔軟な復元力も求められる。その戦略はSDGsをベースとした観光を再構築することが早道だろう。