前回、インターネットという世界共通言語が、神の商業と思われたのでしょうか。崩壊させた厄災は「バベルの塔」の再来ではないかと書いた。
　コロナウイルスで世界各国は国を閉じ、マスクで顔を覆い、ソーシャルディスタンスでコミュニケーション不全の世界が顕在化してきた。
　日本ではさらに５月末まで緊急事態宣言が継続。国民の自粛はいつまで続くのか五里霧中といったところだ。
■人と人の関係が変わる
　「オンライン飲み会」が最近の流行だ。会えない友人と関係を維持したいという思いが募っているわけで、この流れはアフター・コロナでも継続していくだろう。
いくら情報手段が発達しようと生身の人間はリアルな関係性を失うことはできない。人間が人間である限り、「つながり」を求めているのだ。
現在の状況では、コロナ禍の収束は不明だ。しかし確実に言えることは「世界は変わる」と言うことだ。もちろん自分の身辺も大きく変わる。阿倍首相は「ある程度の長期戦を覚悟する必要がある」「新たな日常を1日も早く作らなければならない」と言い出した。
「新たな生活」とは、人に会わなくてもネットを介して生活できる環境なのか？
しかしそれではFace to faceで信頼関係を高めてきた人間関係は音を立てて崩れるだろう。人間関係が希薄となれば、人の痛みや苦しみが理解できなくなる。
某広告機構のＣＭで「人は人から育てられる」というキャッチコピーがあった。多くの有識者や地域づくりの先達も「地域づくりは人づくりに尽きる」と語る。
しばしば相手とコミュケーションが取れず、世界は何度も愚かな戦争に突入している。
人間は言葉を獲得し共感しあう環境から成長してきた。
ユヴァル・ノア・ハラリは「ホモ･デウス」で「ＡＩが私たちの「心」の領域に介入してきたとしても、私たちの「心」にとって、未来の幸福が約束されるわけではない」と言った。ひたすら今よりも豊かな生活を目指してきた人類の未来は、ホモ・サピエンスからホモ・デウスにアップグレードできるだろうか。それともディストピアとなるのか。
このような折りだ。「我々は何者か　我々はどこへ行くのか」とのハラリの問いに向き合う良い機会かも知れない。

■教育は大丈夫か
　学び舎の休校で未来を担う子ども達が心配だ。有り余る時間が与えられたものの友達と会うことや外遊びもスポーツできず、ゲームに興じ与えられた宿題をやる受動的な状況だからだ。
現在は、勉強は塾で、学校は勉強と言うより子ども達の社会生活の一部だ。家庭も行動規範を学ぶところ、そして託児所的な意味合いを学校に期待していたことが見えてきた。
学力は置いておき私が心配するのは、人との分断により「コミュニケーション障害」や「対人恐怖症」の子どもが増加するのではないか、あるいは他人を非難したり攻撃する、コミュ障にならなくても他人との心の距離が離れ、他者を思いやる心が希薄になるなど、コロナ禍がトラウマになるのではないかと思ってしまう。
聴覚障害の方々は手話だけで無く、口の動きを読むことで何を話しているかを理解する。聴覚障害者に限らず相手の口の形や表情がマスクで見えないと不安になる。顔の表情はコミュニケーションだけでなく相手と共感するための大事な要素なのだ。
子ども達が社会的距離を取り、相手の表情も分からない中で自己肯定感すら育めない荒んだ未来を想像したくない。
　この想像を覆すには親が範を示すことしかない。自宅に籠もり生活不安が募る。外に出れば監視社会化している。焦燥感、イライラ感から家庭でのコミュニケーション不全となれば、ＤＶなどに発展し、それが子どもに伝染してしまう。コミュ障を放置すると２０年後３０年後、仕事ができない、友人や恋人ができない、そしてうつ病や引きこもりなど精神障害を発症こともあるからだ。
今は自粛、自粛で周りをみて過敏になっている。子ども達は未来の希望だ。まずは夫婦が朝晩の挨拶や「ありがとう」の言葉がけの実践だろう。
この騒動で様々な経験を子ども達から取り上げない。そして将来の夢や未来を奪わないで欲しい。だから家庭から優しく愛情たっぷりに接して子どもたちを守り、『幸せなコト』を共有できる家族になって欲しいと願っている。