安倍政権は地方の人口減少や地域経済の活性化対策として「まち・ひと・しごと創生本部」を9月に発足し、11月に「まち・ひと・しごと創生法案」を提出した。
来年度の国予算の目玉となる「地方創生」に対し、全国知事会は人口減少や少子化対策など、地方創生を実現するため地方が自由に使える新たな交付金制度を創設するよう求める意見が出され、首相は「個別補助金のように使用目的を狭く縛ることは避ける一方で、地方みずからが政策目標を設定するなど、やる気のある地方からさまざまな提案をいただくことを前提に、必要な支援策を検討する考えだ」と述べ、法案を審議する特別委員会でも石破地方創生担当大臣も、地方創生の実現に向けた少子化対策に関連して「若い世代の結婚や出産への希望をかなえるには、仕事がなければならない。やりがいのある安定した仕事を創出するため、今までとは違う取り組みをしていかなければならない」と答弁している。
しかし地方創生のアドバルーンとして使用された日本創成会議の「消滅可能性都市896全リスト」は、様々な物議を呼ぶばかりでなくリストアップされた市町村職員のモチベーションを下げ、地方交付税の特別枠の廃止や各省の個別補助金・助成金・交付金のカットなど「地方創生」への一本化が進んでいることも事実だ。
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私の講演をお聞きになった方々はご理解いただいていると思いますが、江戸時代から続く根本的な地方搾取の社会システムを変えないと地方は活性化しない。
かつて竹下内閣で大小の自治体に係わらず1億円の大盤振る舞いをした「ふるさと創生事業」は全国に華美な施設を乱造させ、多国間貿易の障壁を無くすとしたウルグアイラウンド合意(WTO組織ができた)の影響に対しても、我が国では国内農業を保護するとして2兆円を越す予算投入をしたが、農業で食べていける環境整備や担い手育成でなく、今では赤字か閉鎖した施設を地方に乱立させる事業となり、農村地域はますます疲弊するという今の状況に至っている。
小手先では駄目だと先例が示しているため、今回はその轍は踏まないと、研究者や官僚を地方に派遣するそうだが、はっきり言えば地方統治ができない首長を横に置いて「お上の意向で伝達し支配する天領の代官」を各地に派遣するということにほかならない。
その事前の策として地方自治体職員のやる気を削ぐ発表をしたようにも思える。
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地方への人の流れを定着させるには、社会システムの新たな制度設計が必要だ。
「地域の特性に即した地域課題の解決」と政府は言うが、その財源として軽自動車の税率アップを考えているのでは本末転倒で、とても東京にいる御用学者や官僚の方々が地域を本当に理解しているとは思えない。
単に田舎志向が増加しているからと乗っかる施策では持続しない。都市と地方の格差を作った根源を見直さず、金と研究者・官僚を配る地方創生は、中央集権の強化に他ならず弱小自治体は、更なる合併を繰り返し実質は弱体化していくことになるだろう。
数々の規制緩和は地方や雇用にダメージを与え続けている。
ここは地方でしかやってはいけない仕事とか、大手は参入してはいけない業種を作るという新たな規制強化をやるべきだ。
次が税制改革による誘導だ。軽自動車は農山漁村で生活する上の必需品。
だから無料にする財源に廻すことが効果的だ。しかし軽自動車税の無料化は市町村の税収を減らすとことになるので、その減収分は地方交付税として国が補填する。
さらに総額には手を付けず住む場所で所得税に段階を付ける。過疎になるほど所得税が安くなる仕組みとすることだ。
田舎は固定資産税がとうぜん安い。さらに土地建物の流動化を誘導すれば地方も活性化する。
現在国では遊休農地、空き屋、空き店舗などは増税する方向で検討しているが、その増額で得た分は活用している農地や施設の税金控除に廻すことが良いと考える。
企業法人税の減税も制限的にやるべき。地方への本社移転したところのみの大規模な減税だ。
そして最後がローカル鉄道と地方バスの無料化。
こうすることで人を地方へ必ず誘導できると考える。この程度の話はドラスティックな変革とまではいかないが、地方が再生する一歩となるはずだ。
後は各地方自治体の力量次第!
大枚をはたかなくてもできることは一杯ある。
地方を暮らしやすくするのは大手量販店やコンビニを呼び込むコトじゃないし、活性化施設を建てることではない。
地方創生は、地方が賢くなることだ。