学校統合といえば、これまでは複式学級を編成しなければならない小学校や中学校をまとめるケースが中心だった。
しかし少子化が一段と進むいま、小学校・中学校の両方で小規模化が深刻化し、両校種を一体化した「小中一貫校」が各地で増えている。
さらに2016年度からは、小学校6年間と中学校3年間を通した9年間を一つの学校として運営する新しいタイプの学校――「義務教育学校」が制度化され、自治体判断で設置できるようになった。
施設形態は、校舎が一体の「施設一体型」と、小・中の校舎が隣接または分離しているものに大別される。なかには幼稚園や保育所まで含めた発達段階一体型の先進事例もある。
共通するのは、「このままでは学校を維持できない」ほど児童生徒数と学級数が減り、学年単独での運営に不安が生じていること。統合を後押ししている最大の要因だ。
■義務教育学校と小中一貫校の違い
文部科学省によれば、2025年度には義務教育学校が全国で261校に達する見込みだ。都市部でも増えているが、最も伸びているのは過疎・中山間地域であり、導入理由の半数以上を「児童生徒数の減少に対応した学校再編」が占める。
導入パターンは概ね次の3類型に整理できる。
1. 過疎地域型:小学校と中学校を統合し、1校の義務教育学校として再編
2. 郊外ニュータウン型:複数校をまとめ、大規模な複合校として再構成
3. 都市部教育改革型:既存の小中を一体的に運営し教育の質向上をめざす
ただし、多くの地域住民にとって「小中一貫校」と「義務教育学校」の違いは分かりづらい。だからこそ、両者を理解したうえで、自分たちの地域の学校の将来を“自分事”として考えてほしい。
両者の違いを端的に整理すると、次のようになる。
• 義務教育学校:9年間を通した「1つの学校」。校種の区切りがなく、制度上も一体
• 小中一貫校:小学校と中学校が別組織のまま連携。一貫教育は行うが制度上は別校

■義務教育学校の特徴とメリット・デメリット
義務教育学校の最大の特徴は、従来の「6・3制」に縛られず、9年間のカリキュラムを一体的に設計できる点だ。発達段階に応じて学年構成を柔軟に組み替えることが可能となる。
特に効果が期待されるのが、小学校から中学校に移る際に生じやすい「中1ギャップ」の緩和や解消である。また、学区外からの受け入れを広げれば、地域外から児童生徒を呼び込む“学校魅力化”の手段にもなりうる。
一方で、課題も少なくない。
9年間をほぼ同じ集団で過ごすことで閉鎖性が高まり、いじめが長期化する懸念がある。加えて、小学生と中学生が同じ空間で生活することによる、思春期特有の問題行動の誘発リスクも指摘されている。
■美咲町「旭学園」の事例
今年視察した岡山県美咲町の義務教育学校「旭学園」では、発達段階に応じて次の3ステージを設定している。
• 前期ステージ:1~4年
• 中期ステージ:5~7年
• 後期ステージ:8~9年
いわゆる「6・3制」ではなく「4・3・2制」の学年区分を採用し、各ステージに応じた指導体制を敷いている点が特徴的だ。
また「地域と共にある学校」を掲げ、学区住民を地域学校協働活動推進員として委嘱し、地域・保護者・教職員が「目指す子ども像」を常に共有している。コミュニティスクールとして、学校を核に地域ぐるみで子どもを育てる体制が定着している。
■おわりに
義務教育学校は、児童生徒数が減り続ける地域において、教育の質を長期的に確保するうえで有力な選択肢であり、制度としての合理性も高い。
しかし、メリットだけに目を奪われて導入を急ぐべきではない。閉鎖性の問題や異年齢が同じ空間で過ごすことによるリスクなど、懸念点を丁寧に検証する必要がある。
行政は、制度の長所と短所を正しく理解し、地域住民と対話を重ねながら、その地域に本当にふさわしい学校のあり方を選び取っていくべきだ。

