一覧地域再生

地域にイノベーションを起こせるか

今では誰もが使っているQRコード。
あれは、日本人の一人のエンジニアが、工場の現場での「作業の手間を減らしたい」という思いから生まれた小さな発明だ。
そして、今や政治や行政の情報発信でも当たり前になったYouTubeやFacebookなど、もともとは、若者が「異性と出会いたい」という、ちょっとした欲求から始まったサービスだ。
つまり、イノベーションというのは、決して「大きな構想」や「国家的プロジェクト」から生まれるものではない。
現場の課題や日常の違和感、あるいは好奇心や遊び心など、小さな芽からこそ、世界を変える力が生まれてくる。
そう考えるとノーベル賞よりも、奇抜でユーモアのある研究を表彰するイグノーベル賞の方が、むしろイノベーションの原点に近いのかもしれない。
だが今の日本では、かつてのようなイノベーションが生まれにくくなっている。
なぜだろう?
経済学者シュンペーターは、イノベーションを「新結合」と名付けた。
異なる分野や、まったく関係なさそうな要素を組み合わせて、新しい価値を生み出すこと。
日本では「技術革新」と訳されるが、実はそれ以上に「発想の組み合わせ」「思考の転換」こそが本質といえる。
では、なぜ日本では新しい結合を思いつくことが少なくなったのか。
その理由の一つは、日本の教育や組織文化にある。
「正解は一つ」「前例に従う」という考え方や教育が、長く続いた結果、自由な発想や異なる意見を尊重する力を弱めてしまったと考える。しかしこれも偏った見方であり、硬直化しやすい。
「これはこういうものだ」と思い込んでしまえば、もうそこから新しい道は見えなくなる。
イノベーションは常識の外側にあるからだ。
「なぜ?」「どうして?」と疑問を持つこと。
その小さな問いが、最初の一歩だ。
自治体の現場にも、イノベーションの種はたくさん眠っている。
例えば、行政手続きの煩雑さ、地域行事の担い手不足、空き施設の活用。
一見「問題」に見えることも、見方を変えれば新しい仕組みを生み出すチャンスである。
最初は真似でも良い。
他の自治体や地域の取り組みを学び、自分たちなりに工夫してみる。
その繰り返しが力になり、やがてオリジナリティに変わっていく。
大事なのは、いつもチャレンジャーであり続けること。
失敗を恐れず、「やってみよう」と声を上げること。
その勇気が、組織を動かし、地域を変えていくはずだ。
さらにもう一つ。
イノベーションを生むには、「文化」をつくることが欠かせない。
一人ひとりが自由に意見を出せる風土。
多様な考え方を受け入れ、結びつける風土。
その「文化」こそが、次のイノベーションを育てる土壌となる。
イノベーションは、特別な人だけのものではない。
今日これを読んでいる皆さん一人ひとりの中に、必ずその種があるはずだ。
それを信じて、まずは小さな一歩を踏み出してみよう。

Pocket

QRコード