東京の感染者はまだ一日30人を超える日もあるが、6月19日、自粛要請は全面解除され移動も自由になった。
首相は全面解除の会見で「社会経済活動を犠牲とするこれまでのやり方は長続きしない。できる限り制限的でない手法で感染リスクをコントロールしながら、しっかりと経済を回していく」と述べていたが、企業の社員の出張などはまだ自粛傾向が続いている。出張が減ることでビジネスホテルの宿泊客はコロナ禍以前に戻らない。
大観光地に限らず、どの地方にとっても相当痛い状況と言える。
とは言うものの自粛明けの6月21日は、2割まで戻れば良いと思っていたが自粛リベンジなのか4~5割まで戻している観光地もあり観光の回復が思ったよりも上向いたようだ。
出張も復活してきた。
しかしまだ宿泊業を中心に苦しい時期は続く。特に東京はオリンピック・パラリンピックの開催を当て込んで、大量にビジネスホテルが乱立し供給過多になっているからだ。
日本政府観光局(JNTO)が、2020年5月の訪日外国人旅行者数(推計値)では、5月は前年の277万人から99.9%減となる1700人に激減しており、本年4000万人と息巻いていたインバウンド観光は世界の状況を見れば当分回復は望めない。
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旅はもちろん「移動」「交流」が基本だ。その足を止められた途端に大都市だけで無く地方経済を逼迫させる事態となっている。
政府が予算付けした「Go toトラベル」は初手でつまずき、旅行者が動きたい夏休みに間に合うかどうかも怪しくなってきた。
さらに教育の遅れで夏休み期間も少なくなるため、旅行計画を立てづらい状況にある。
各県では独自の「ふっこう割」で県内観光客の旅を促しており、30~40代の夫婦が少し動き出しているものの先週宿泊した旅館で聞いたところ、まだ通年の2割程度で、夏休みの予約も満館状態からほど遠いと言う。
以前も書いたが、旅に出たいという意欲が上がる要素は「安心・安全」だ。コロナウイルスの感染への警戒感や長い自粛が旅行意欲を削いでいることが気になるところだ。
この年代がそろそろ動き出している
長野県・別所温泉
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地域のリブートのキーとなるものは「観光復元力」である。
一気に4~5割の観光客を取り戻したところは、元々の観光ポテンシャルを有しているところだろう。宿泊で回復基調にある施設は、休業中でもお客様に営業レターなどでアプローチしていたかもしれない。
働き方もテレワークが進んだが、こうした時だからこそアナログな手紙は、オンラインやWebメールと違い、気持ちが伝わる意外に効果があるのだ。
東日本大震災以降、エシカル(応援)消費が進んでいた。自粛中は近所の飲食店の応援を込めたデリバリーやテイクアウトが盛んになった。これもエシカル消費の一端だが、馴染みの宿から気持ちのこもった手紙が届けば、やはり気になるし、安全な旅が可能になれば行こうとの「きっかけ」になるわけだ。
観光の復元力が強い地域は回復も早い。今までも一つの災害や風評被害で観光客が一瞬に消えても、今回も分かるように一瞬で戻るのが観光だ。
事実、他産業と比較すればその回復力が強いことが分かるだろう。
私は既に時代に乗れなくなったのか、どうしてもFace to Faceでないと相手の熱量が分からないし、話も本気になれない。
ホモサピエンスは誕生してから、ずっと移動を繰り返してきた。移動は人間のDNAに組み込まれたものなのだ。自粛リベンジの流れは当然の姿であり、旅に出たい欲求を誰も止められない。
出張も復活してきた。
ゆえに行政は観光振興計画を再考し、新たな観光で地域を立て直すことが活性化の近道だ。
そしてその計画を実行していくのはDMOの使命である。