都市住民の農山漁村への移住願望が高まっているという。
本当にそうなのだろうか私は懐疑的だ。
しかし若者が東京に憧れ農山漁村から出ていくのは顕著だ。
そして困ったことに一度出ると帰らない。よほどのことが無い限り帰りたくないと思っているのも事実だ。
末端自治体は妄想を抱いて金で買うような移住対策を進めるが、すべてが成功しているとは言い難い。
ここに行ってみたい、滞在したい暮らしたいとなる魅力を地域が醸し出しているか?
何もPRしなくても「ここの景観、自然はすごいね」と感じてもらえば良いことで、ことさら自然景観を競い合っても意味が無い。
宮本常一は「旅と観光」の中で、「景勝の地などというものは、そこに住む人にとって生活の重荷にこそなれ、よいことは何一つなかったであろう。それは景勝の地に所在する民家や耕地や道を見ればわかる。(中略)国はそういうところを国立公園に指定して、住民生活の向上を図ろうとしているのかもわからないが、観光客のための道は広くしても、住民のための改良は何ほども進んではいない。ただ周囲の者が「おまえのところは景色がよい」というので、「景色がよいというものはこういうものか」と思うようになり、さらにはその景色を売り物にして少し儲からぬものかと、みな考えるようになってきた。しかしそれも自分たちが楽しもうとするのではなくて、それをお金儲けの種にしようとする程度のもの」と1987年に書いている。
当時の宮本の指摘は今も変わらず、各自治体や観光協会などは、地域ビジョンやコンセプトが曖昧なのに、うちは凄いところだぞ~!とむしろ積極的に情報発信している。しかも、そのほとんどが地域のバラ売り、安売りのオンパレードだ。
何よりも今、暮らしている人々が「ふるさと」に誇りを持ち、「ここは良いよ」と語っているか?
仕事場が無いのに、子どもたちが帰ってきて困る!なんて笑って言えてる地域か?
地方自治体が進める施策は、多少不便でも「ここに自分の居場所がある」と感じられる地域づくりだ。
会う人が皆、笑顔で挨拶しあえるだけでも地域は変わる。
笑顔は金が掛からない最大のおもてなしであり、地域の楽しさ豊かさを表現することだ。
カタカナの格好よさげな表現などに惑わされないで、地域が地域らしく、暮らす方々がそれぞれに幸せを表現できる環境を創ろう!