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真よみがえれ廃校(8)-未利用廃校を活かしたい

柳田國男翁は「昔の良いことの消失は仕方ない。しかし消失したという意識は必要である。次に、それは消えて良いものか、消えて悪いものなら、その代わりはできているか」と、大石伍一に語った。
 いま柳田翁に問われれば、答えは「否」。地域が失われたら元に戻らないし、代わりはない。
 柳田翁は「昔の良いことの消失は仕方ない」と言うが、消えて良いことは古い因習と地区にしか理解できない硬直化した常識である。
 学校は地域の誇りであり、誇りが消失することは地域そのものを失う。
今こそ住民と行政が寄り添い、廃校を拠点に地域を再起動することが急務だ。
田舎の閉鎖性が今、ここで問われていると言っても過言ではない。
■地域をリデザインし、再生する足がかりを創る
旧校舎を地域の拠り所として存続させることは、そのコミュニティのギリギリの誇りを保つシンボルであることを忘れてはいけない。
ゆえに廃校となった施設を放置して、廃墟にしてはいけない。
いま起こりつつある事態の重大性を理解し、それに対して適切な対策を行えるかどうかが、地域の未来を左右する。
そのためにはバーンアウトした住民に新たな燃料を投入することが大切となる。
学校を多機能な拠点として活用したり、地域の子育て世代と高齢者との交流の場にする、またボランティアや企業の協力を得て学校の運営を支えるなど、地域にとって貴重な拠点として存続させるために、地域住民の協力や創意工夫による取り組みが求められる。
そのためには学校区の住民意識を変えることが重要だ。
廃校活用を自分事として考えられる方向に導かないといけない。各地で行っているミーティングやワークショップだけでなく、様々なアプローチを組み合わせて企画することが重要となる。
 その際には、特に地域リーダーや地域の有志が、廃校活用に対するリーダーシップを発揮することが重要だ。
地域住民に対して廃校活用の意義を情熱的に訴え、活動参加を呼びかけることで、住民が自分事として捉えるきっかけを与えるからだ。
 だが地域リーダーの不在が顕著となっていることも大きな課題である。
行政だけで完全にコントロールすることは難しい。そうした学校区ではぜひ外部アドバイザーの活用を図ることも選択肢だ。
 まずは長年、廃校活用の調査・指導から、廃校を有効に活用することの重要性やメリットを啓発する活動を行っている都市農山漁村交流活性化機構に相談すると良いだろう。
■「学びの土壌」づくりで、知恵のシェアリングをしようIMG_1991
地域課題の克服には、従来施策の延長線ではなく未来に向けた「新たな紡ぎ手」が必要だ。
その紡ぎ手を経済観念とは無縁であった廃校で、様々な勉強会を実施し若者を育むことができれば地域の最強の学校となるはずだ。
その活動環境を整えることは行政の役割だ。
集落や地域でたった一人しか知らない資源は、いつしか無くなる恐れがある。特に高齢者の有する歴史文化やノウハウなどの様々な知恵をアーカイブすることは重要なのだ。
地域には地場の技術力から、環境、暮らし、文化等の社会関係資本・文化資本の素晴らしい財が存在している。
原石を洗い出し磨きを掛け、多様な主体と連携することで地域内投資を誘発し、さらに外部の投資意欲を誘引できれば、技術力のみでなく、様々な職能において人材の確保を促し、地域の人財力が向上する。

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