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地域再生の切り札1―DX推進で地方創生できるか

 石破首相は就任後初の所信表明で「地方こそ成長の主役です。地方創生をめぐる、これまでの成果と反省を活かし、地方創生2.0として再起動させます」と述べ「地方創生2.0」を政権の旗印に掲げた。
■自治体のDX推進は住民本位となるか
 2024年度補正予算は「日本経済・地方経済の成長」に5兆7000億円と全体の4割を占めた。中でも力を入れているのが地方に交付される「デジタル田園都市国家構想交付金」などDXの推進で、近年注目を集めているデジタル技術を用いた新しい取り組みを支援する模様だ。
 少子・高齢化に加え、若年層の流出などに伴う人口減少に、伝統的な産業を始め地域産業の衰退による地方経済の縮小で、地方自治体は現在、未曾有の危機に直面している。
 これら複層的な課題に対し、旧来型の取り組みではもはや解決が難しくなっており、地域社会の存続が危ぶまれるケースも散見されだした。
 こうした状況の中、AIの急速な進化がこれらの課題に対する新たなアプローチの可能性を見せてきた。デジタル技術の進化は、データに基づく政策立案や行政サービスのオンライン化、地域資源のデジタル活用など、地域課題を解決する強力なツールとなってきたのである。
 給付金やワクチン接種などコロナ禍を経る中で、行政サービスのデジタル化への期待は急速に高まった。さらにテレワークやワーケーションの普及が、移住策の第一歩となると考えた自治体にとって、自治体DXへの関心を高めるきっかけとなったと思える。
■課題を正確に把握できるかが鍵
 自治体DX推進は単なる行政サービスの効率化とか内部管理などの矮小化した事務改革ではなく、その本質は「住民の暮らしをより良くすること。そして持続的社会にすること」にある。
 日本国憲法第92条で規定されている「地方自治の本旨」は、自治体のことは住民の意思に基づいて決定し、住民の参加によって執行することだ。
 首長や自治体職員は、よく「住民参加が大事だ」と言うが、行政が決定し実行しようとするDXは、はたして受益者である住民が「利用するサービス」となっているだろうか。
 地方自治体は住民がいて初めて成立する。その意味からDX推進は計画時から住民参加は必須である。安易に行政執行部だけで決定し進めてはいけない。
 その代表的な失敗例は政府が強引に進めた「マイナ保険証」だ。
 それぞれ複雑な課題が山積している全国の地方自治体はこの悪手に学んで欲しい。
 地方創生2.0でDXによる行政内部の改革はあっても良い。
 だがデジタル化により、新しい地域経営の形は何かを住民参加で発見し、官民でシェアする。その具体策は地域の価値創造や生活環境のアップサイクルに繋がらなければ意味が無い。

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