新型コロナウイルスで1日当たり入国者数上限5万人が10月11日から撤廃される。さらに団体旅行のみから、個人旅行客も解禁されビザ取得も免除される。
折しも140円台の急速な円安が進んでいることもインバウンドの追い風だ。
岸田首相はインバウンドの年間消費額5兆円超を目指すと言い、受入関係者からも歓迎の声が上がる。
国内旅行も修学旅行は既に回復基調が見られ、6月に京都でリサーチしたときにはコロナ前の8割まで戻っていた。
個人旅行や家族・グループ旅行でリベンジ消費の傾向が見られる中で、まもなく観光需要喚起策として「全国旅行支援」が実施される。秋の行楽シーズンにかけて国内客が増加するだろうとの期待感も膨らむ。
しかし、3年間のコロナ禍の影響で国内の受入体制がボロボロになっており、サービス業はことのほか回復が遅れている。
コロナ禍の間にサービス産業の離職が相次ぎ、現場のサービス人材が決定的に不足している。
例えばタクシーやバスの運転手が良い例だ。転職した者は元の仕事場はまたいつ首になるか判らないので、なかなか戻らない。
旅行ニーズが進捗しても現場で旅客運送が不足していれば、受入ができない。大手旅行代理店でも派遣切りをした状況で、ベテランの派遣者は戻らない。
日本の観光関係者はもっとも大切で不可欠な人材を日雇い同然の扱いをしてきた。そのツケが今、回ってきているのだ。
これでは観光の復活など無理な話だ。
日本のインバウンドはアジア圏をメインとしてきた。中国のゼロコロナ政策で中国からの客数回復は当面見込めない。
欧米はウクライナ問題のため、ロシアを通過する飛行ルートを回避せざるを得ない。これからさらにヨーロッパ経済が落ち込むと、潜在ニーズがあっても地球を半周して日本を訪問するには躊躇するだろう。
政府が掲げていた訪日外国人数目標(2030年,6000万人)の達成なんて幻になってしまった。
それでもゴールデンルートや一部著名観光地は、規制撤廃でインバウンド客の増加は見込められる。
しかしその他の地方はまだ暫く雌伏の時が続く。
だが、その間に準備することは山ほどある。そして準備が整ったときは、観光経済の回復が待ち受けているだろう。
そのチャンスを確実な果実とするために、地域の品質を上げることが重要だ。
もうコロナ禍前のような薄利多売でなく、地域の付加価値を創造する。高付加価値化による一人当たり客単価を上げるコンテンツづくりをすることだ。
これからは「その場所、その時、その体験」を充実させることだ。
高い料金でも客が満足するサービスや体験メニューがあれば客は必ずやってくる。
地域の自然や食、歴史文化、アクティビティーを棚卸しして、再構築してみよう。