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土着してもらう観光

観光庁が昨年から「第2のふるさとづくり」について有識者会議を行ってきた。
「何度も地域に通う旅、帰る旅」というスタイルを推進・定着させることで、国内観光の新しい需要を掘り起こし、地域経済の活性化につなげることを目的としている。
私は平成10年(1998)に「第3のふるさとづくり」を提唱しワーキングホリデーを推進してきた。グリーンツーリズムりんご
なぜ2ではなく3なのか。
当時の考えでは大都市に暮らす方々は「自分のふるさと」が現在暮らしているところであり、「第1のふるさと」である。そして両親や親戚、友人が暮らす出身地が「第2のふるさと」であり、それらのエリアと全く違う新たな「第3のふるさとづくり」をしてみませんか?と呼びかけたのである。
当然、一度きりの関係で無く、毎年何度も訪問してもらうことや働いてもらうこと、そして地域のファンづくり、さらに移住定住までを想定した事業であり、観光庁が進めようとしている「何度も地域に通う旅」とよく似ている。そう言えば当時のツアータイトルでも「暮らすように旅をする」とのキャッチフレーズも使っていた。
ここ数年前から省庁から出る事業が、私が20,30年前に提案したものが度々である。ある意味、ようやく時代が追いついてきたのか?それとも省庁の政策形成能力が落ちているのだろうか?
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ことわざに「日光を見ずして結構と言うなかれ」とある。イタリアにも「ナポリを見てから死ね」と言うことわざもある。
日光東照宮
このくらいのキャッチフレーズがそれぞれの地域に欲しいものだ。
つまりそれは地域のキラーコンテンツに関わる。
ゴルゴ13は狙ったものを絶対に外さないのと同じで、いわゆる鉄板ネタのことである。
地域の最大の「ウリ」はなにか。もう一度考えてみよう。
地域独自の歴史文化や自然、暮らしを再度、客目線でブラッシュアップすることや既存のコンテンツもプラスアルファを加えるなどして、その資源を観光客と丁寧に結びつけることが企画段階で大事となる。
激変する社会に柔軟に対応し、地域の多様な資源で吸引力の強いコンテンツを創り上げることだ。
新たなコンテンツが一発ヒットとなるとは限らないが、地域資源のモノやコトを内外に訴える仕込みが必要であろう。その際には外へ出た出身者が帰りやすい地域として考えることも大切だ。
回復基調であった観光だが、第6波の影響で再び出口が閉ざされた。
ポストコロナにパーフェクトな答えなど存在しない。
だが「太陽が照っているうちに干し草を作れ」のことわざのように、今はストックの時だ。
いつ好転しても準備を怠らなければ、「今だ!」となった時にただちにアクションを起こせる。

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宮本常一は「旅本来の姿は、自分たち以外の民衆を発見し、手をつなぐものであったことを忘れてはならない」と述べた。
コロナ禍で人々は分断されており、孤立感が深まる中で、人は人とのつながりを求めている。
ゆえに旅人と地域住民という「人」と「人」のつながりがツーリズムで今、最も重要な要素となるのだ。
『その場所、その時、その人』で、なければならないコンテンツを創造しようではないか。

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