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ポスト・コロナの地方観光づくり-究極の旅は「あなたに会いたい!」

新たな観光の創造には、自然・文化・歴史・産業・教育・暮らしほか、極めて多様な観点からの総合的な探求が欠かせない。要するに多様な資源と人材が係わる総合産業として、地域を大局から俯瞰しながら、観光素材となり得る地域資源の歴史や伝統を再発見し、関係する方々の習俗や誇りを加味した物語を創っていくことが肝要である。
地域にはたくさんの抽斗があり、そこを開ければ妙薬が入っている。後はその地域ならではの最善の処方(素材の切り口を変える、立ち位置を半歩変える、新しい考え方をする、裏から斜めから考察する)をすれば良いのだ。
農山漁村では豪華料理や丁重なサービスの提供でなく、地域の環境や文化、人に魅力に触れ「癒され感」を、普段通りにできるだろうか。
まずは「見るところなんて無いよ」から、住民一人ひとりが「◯◯は良いよ!こんなところがあるよ。面白いよ!」と言える住民を、観光客をお迎えするプレイヤー(おもてなしの最前線に立つ)として育成することが目標となる。
観光関係業界のスタッフが頑張るのは当たり前だが、今は住民による地域丸ごとの「おもてなし」が大切なのだ。旅人が会いたいと思う住民の数が多ければ、地域への吸引力は否が応でも増してくるのである。
人とホスピタリティ研究所代表の高野登氏は「晴れやかな気持ちは顔に出る。そんな顔のもとに人は集まる」と言っている。
晴れやかな地域住民のところに人は行きたくなるものだ。
各地のお手伝いをしていると、自分の地域を盛り上げたいとする熱い人間にたくさん出会う。
その方々は大概がポジティブで「何か面白いことをやろう、地域を元気にするぞ」と考えており、そうした地域には地元の叡智と地域になかった外部からのノウハウや人材が集まってきて、新たなアイデアが生まれ必ず動き出す。
長崎市内でマップを持って迷っていると、通りすがりの地元民が声を掛け、案内までしてくれた。
自分の人生を重ね合わせ語ってくれたガイドの方に感動した。
追いかけてきてパンフレットを手渡ししてくれた土産物屋のばあちゃんが嬉しかった。

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路に迷っていたらわざわざ車を止めて案内してくれたタクシードライバー。
各地で度々出会う素敵な方々(自分は儲からないのに)には、また会いたいと思う。
これらに共通することは、観光関係だけでない異業種、高齢者、主婦など、普通の方々が「すっぴん」で対応してくれている点だ。
今はインフラ整備ではなく、人財のストックが大切であると痛切に感じる。
観光では雄大な景色や重要文化財、テーマパークなど一目見て分かるものや、交通面などの立地条件が先に語られることが多いのだが、とっておきの手は「人」であることを再確認して欲しいと思う。
一時的な人財のリーケージはやむを得えないが、地域と縁もゆかりも無い移住者を呼び寄せる前に自分の子弟をUターンさせることに、家庭も地域も行政も傾注すべきだ。
それには個人、そしてコミュニティの「心のアンチエイジング」(プラス思考がよい)である。
また来年も訪問したいと思わせるのが観光だ。
特定の場所の自然一つでも、一度や二度の触れ合いではその魅力の一端しか堪能できない。
宮本常一は「旅本来の姿は、自分たち以外の民衆を発見し、手をつなぐものであったことを忘れてはならない」と述べていた。
そう!切り札は、ハードウェアを飛び越える人材なのだ。
くどいようだが観光で大切なのは住民一人ひとりの普段の暮らしぶりや普段のおもてなしである。
この人ともう一度会いたい、そこに行きたいと感じさせるには、住民自身が健康な心身を有し、自立する地域・元気な地域を育んでいることが大前提だ。自治体は常識だろうが、我が地域の暮らしの向上を第一に、スマイル施策を展開することしかない。
人間が人間である限り、人は人とのつながりを求めている。
旅人と地域住民という「人」と「人」のつながりが観光で最も重要な要素なのだ。
そのため単なる外貨獲得のために、場(ばか)当たり的な対応を絶対に避けないといけないので、根本に“人対人”のコミュニケーションを重視した、人間中心の観光設計デザインが重要となる。
複数の資源や人が関係することでシナジー効果(相乗効果)が生まれたら、旅人の支持・共感を得られる可能性は高くなる。
そこに暮らす人は全世界を探してもいない。
再訪したいと感じてもらうには「この人にもう一度会いたい」と感じてもらうことだ。
「あなた」に会いたいとなれば、余所へは行くことはない。
これこそが唯一無二の究極の旅となるのだ。
会いたいと思える観光の従事者や地域住民を、何人輩出するかを観光の果実と考えよう。

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