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地域再生のための観光とはなにか横道3~子育てができない

「今の場所に保育園があるから我が子を預けてパートに行けるが、遠くなれば仕事を辞めないといけない」これでは「女性の活躍」どころか、共働きさえできない貧困家庭づくりになりかねない。「学校にいく年齢になったので、自分が生まれ育った環境の良い田舎に引っ越してきたが、学校が無くなればUターンした意味が無くなる」とふるさとに未来を託せない話も聞いた。

政府は2060年に特殊出生率を2.0まで引き上げたいとしているが、子どもの声が煩いから保育園の建設反対などと言う大人がいる限り2.0は絶対に不可能だ。

地域創生とは、地域に帰ることができる、好きな地域で暮らすことができるようにすることだが、肝心の自治体自身が帰る魅力を削ぎ、働く環境を悪くしているのでは、どれほど素晴らしい再生計画を立案しても画竜点睛を欠く。

日本は先進国でも最低の教育予算だ。これで本当に少子化を食い止めることができるだろうか?

果たして来年上げると首相が断言した消費税は、子育てや地域の担い手づくりへ予算の重点配分を行い、持続する「ふるさと」としての地域を創ることに回してくれるだろうか。

◇地域防災と地域福祉は一体

日本の高齢化率は2060年に39.9%になるとの推計がある。これはあくまで日本全体のことであり、私たちの地域は50%を超えているかもしれないし、既に50%を越えている集落も存在する。「年寄りばかりで動けない。もう構わないでくれ。頑張れと言われても無理だ」と、自ら動かない集落や地域もあるが。それらのほとんどは、行政がサービス業を自称して高コストの依存体質を作ってしまったことが原因だ。

とはいえ過疎化や高齢化を嘆き、ただ行政に依存するのは問題だとして、高齢化率50%を越える集落や地域でも、創意工夫を凝らし、公益的任務を担って集落の維持保全に努めている地域も増加している。

中山間地域の最大の課題は、地域防災と地域包括ケアシステムだ。しかし行政組織ではそれぞれの部署が独自に実施していて連携は見られない。いざ災害となったときには隣近所の支え合いが命綱だ。そして支え合いが重要なのは、日常の高齢者の見守りも同様だが、行政の防災担当は地域包括ケアのことは知らないし、福祉担当は「防災は自分の管轄ではない」と思っている。さらに買い物難民や空き屋の対策は、これまた各々別の部署が所管している。

これら福祉・防災の受益者は同一にも係わらず、別々の計画を策定し、それぞれ細分化しての業務は不効率ばかりかリスクがマスばかりだ。

◇飯田市千代地区の取組

飯田市で山村振興地区の指定を受けている『千代地区』には、二つの保育園と学校がある。

平成15年、少子化から千栄保育園に通う園児が10人未満に落ち込んだため市より統合もしくは民営化の提案がされた。しかし住民は「閉園することは、子育て環境の悪化に繋がり、いずれ小学校閉校に向かう」と千栄地区の将来を考えて存続民営化を選択した。

当時の園長は「保護者との会合は、多いときには週に3回、夜の12時過ぎになったこともよくあった。『千栄』も『千代』も一つの地域の意識が全員にあった」また、保護者も保育園の民営化の影響や、保育の質に不安もあったが、地域が守ってくれるという安心感はあった」と述べている。

自治会は早急な結論を出さず「千代地区保育園問題特別委員会」で1年間民営化について検討を重ね、千代保育園・千栄保育園を民営化することを決定、

各世帯の出資と都市部ふるさと会からの出資1000万円を基本財産に「社会福祉法人 千代しゃくなげの会」を設立した。

「千代の子どもは千代で育てる」とする自立した考え方は持続するための第一条件だろう。

人口減少や高齢化は待ったなしでやってくる。しかし逆転の発想で見れば、福祉分野は、量的・質的に確実な雇用や関連ビジネスの宝庫だ。現在の福祉施設の劣悪な環境を克服し、経済的にも魅力ある就労環境を創り出すために、飯田市千代地区のように、地元で資金を集め、投資し、循環させることで、人口減少を食い止める大きな要素になるに違いない。

千栄保育園民営化した千栄保育園(千代保育園分園)

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